「森保監督就任時の若き三銃士‘NMD’ から8年、平均年齢ちょっと高めの三銃士‘N(長友)M(南野)Y(吉田)’が支える日本代表のかたち
ナッシュビルで行われた23日の練習前、まだ選手も報道陣もまばらなピッチを南野拓実(31)が1人、スパイクを履いて走っていた。森保ジャパンの最多得点者(26点)が向かったのはメインのピッチではなく隣接するピッチ。トレーナーとボールを使った練習をスタートさせると森保監督も笑顔で何か声をかけている。昨年の左前十字じん帯損傷の大けがからもしかするとスパイク、ボ―ル、ピッチの3つが初めて揃ったリハビリがここでスタートしたのかもしれない。
たとえ練習や試合ができなくても、大怪我、困難から復帰するプロセスにはエネルギーがみなぎる。南野がスパイクを履いて走るポジティブな姿をわずかでも公に見せたのは「メンター」としての重要な任務だったと思う。
ーすぐに行きます、と合流した吉田ー
代表は6月2日に日本を出発し最初のキャンプ地となったメキシコ・モンテレイに。5月31日の壮行試合(アイスランド戦)で「見送られた」はずの吉田麻也(37)がここで合流した。盛大なセレモニーで別れたばかりの吉田に「サポートメンバー」としての合流を打診するのは時間的にも儀礼的も「失礼ではないか」との声はあったという。もちろん本人もどこかバツが悪かったはずだ。しかし吉田は「代表のためにまだ何か自分にできることがあるならば今すぐに行きます」とすぐにモンテレイに飛んだ。
ー長友は試合に出ている」ー
そして、今大会「レジェンド」としてメッシ、ロナウド(2人は6大会連続出場)、モドリッチ、ノイアー、オチョワと並んで5大会連続出場を果たした39歳・長友佑都である。オランダ、チュニジア戦を終えて、まだピッチに立っていないのはフィールドプレーヤーでは長友と、遠藤に代わって緊急招集された町野の2人のみとされる。
しかし長友は2試合ともベンチから飛び出す勢いでピッチに立ち続けて座らない。チームメイトを鼓舞し、飲水タイムには最前列でミーティングに集中して声をかける。第4審に「そちらの方、前に出過ぎです」と注意されても、勝ちたいとの闘志を全身全霊で表わす。22日の練習後のミックスゾーンで「長友選手がまだ出場していない、と言われますが、私には出場しているように見えます・・・」と質問した。長友は声のトーンをひとつあげて言うと取材の輪が笑顔と笑い声に包まれる。
「ピッチに入っていますね。たぶんピッチにいるんじゃないですか、ナガトモ・・・相手の選手がサイドにいるときは相当な声で(相手に)圧をかけていますし、皆さんには聞こえないだろうけど・・・そのくらい一緒に戦っている。ピッチって意外に孤独なんでね、ミスなんかしたら本当にそうで孤独にさせないように声をかけますね」世界中が注目する大舞台W杯のピッチが「孤独」なんて長友でないと絶対に思い付かない表現だろう。
森保監督の就任直後の2018年には、中島翔哉、南野、堂安の若き攻撃ユニットが「三銃士」と、頭文字で「NMD」と盛んに報じられたのを思い出し出す。当時とは違い、守備に回り自分の望むポジションとは違う役割にも献身的に臨む堂安は、ユニットを独立して今や代表の要である。
「経験の引き出し」をたくさん持つ、平均年齢ちょっと高めのユニット(南野はまだ31歳)「NMY」は、W杯未経験者が半分のチームを支え一緒に前進している。吉田と南野はスタッフADを受けピッチに入ってボ―ルやマークを片付けたり、試合後ファンに手を振るサービスをしたり忙しい。レジェンドたちの献身とポジティブな姿勢が日本代表をどこまで押し上げるだろう。
森保監督、コーチ陣がW杯上位に進むためにこの4年求めた個の力、コンディショニング、戦術対応力、諦めない団結力で描かれる日本代表最後のピースが「ベテラン三銃士」によって埋まろうとしている。


