スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2026年6月11日 (木)

サッカー日本代表 W杯期間中のナッシュビルの「家」でキャンプスタート 長友佑都の「W杯の嗅覚」とは・・・・

 日本代表も最初のトレーニングキャンプをメキシコ・モンテレイで終え、今大会、事務方の総力戦で獲得したテネシー州ナッシュビルのベースキャンプ地でW杯期間中の「家」で最初の休日を過ごした。
 実は同じ米国資本のホテルが昨年日本に上陸。同じ高級ホテルを5月31日のアイスランド戦前、東京で3泊利用している。ホテルコンセプトやしつらえは世界中で共通するラグジュアリーなホテルなので、環境整備にはコメントの多い選手にも好評だったようだ。ナッシュビルの「家」にモンテレイから入った時、「あれ?この前東京でも?スゴイいいじゃない?」と、どこかでホッとしているはずだ。
 小さいけれどこうした安心感の提供も偶然ではなく、事務方の「選手がよりリラックスし勝つ確率を1%でも上げる」ための努力で今回の日本代表の「家」はこれまでの7大会と比較しても充実しているのではないか。過去の経験の歴史を活かしているのは選手だけではない。環境整備におけるスタッフの知見の積み重ねも集大成となる。

 開幕が迫るなか、5大会連続出場を果たした長友佑都が選出会見(5月15日)で選んだ言葉が印象に残る。
 長友は「W杯期間はとても長く、試合だけ、ピッチだけでは戦えないし本当に色々なことが起きて、皆さん(メディア)にも分からない、御話もできないようなことが日々起きる」と、私たちが見られるピッチだけではない場所の時間に言及した。短い会見のなかだったが「W杯の嗅覚が自分にはある。それを活かして空気清浄機みたいな役割もできるんじゃないか」と言った。
 今回のW杯で代表が堂々と優勝を目指す、と口にできるのは、ピッチ、対戦国との試合といった氷山の一角だけではなく、私たちには分からない、聞く機会もなく見えない氷山の下の膨大な氷の塊について強い自信を抱いているからなのだろう。8大会中5大会に出場する長友の「W杯の嗅覚」という単語が、試合と1カ月以上続く集団生活の構図をとてもうまく、リアリティ溢れる表現をしていると思う。
 メンバー表とともにメディアに配られている日程表には2ページに渡って4週間の予定がすでに書き込まれている。今回に限ったものではないが優勝まで。
 98年からの取材になるというのに、考えてみると自分には長友が言った「嗅覚」が全く備わって来なかったのが本当に残念。トーナメントに進出すればいつ終わるのか分からない、どこに行くかもわからない。タフでハッピーで時に残酷な不思議な旅を想像しながらスーツケースにあれこれ詰め込んでいる。


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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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