スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2026年6月20日 (土)

チュニジアのルナール新監督、日本代表・森保一監督 誕生日も1カ月違いの同じ57歳同士・・・日本代表の’頭脳’分析班の秘策は?

 この日、前日会見に臨んだ森保監督はチュニジア戦について「(スウェーデン戦の大敗後、監督を交代して臨む日本戦に)死にもの狂いで戦ってくる。以前のチュニジアとは別のチームと戦う覚悟を持っていかないと」と、W杯で過去1勝しかできていない2戦目の難関に、さらに脅威が加わった状況に緊張感を漂わせた。
 日本の後に会見を行ったルナール監督(フランス)も、日本代表について「W杯アジア最終予選でも対戦しているしアジアNO1のチーム。ただし、今、私がフォーカスしているのは日本ではなくチュニジアチームだ」と、指揮をとって3日目のチームに焦点を絞る。今大会初出場のカーボベルデがスペインに引き分け、コンゴ民主共和国(13大会ぶり)もポルトガルと引き分けた試合を引き合いに「これは組織がしっかりとし、チームが一体となって、強いモチベーションを持って戦えば結果を出せるという希望を与えてくれるものだ」と、大会1試合で監督交代の異例の緊急事態に強い姿勢をのぞかせた
 2人とも1968年生まれ、誕生日も森保監督が8月、ルナール監督が9月と1カ月違い。国は違うがサッカーで同世代を生きてきた57歳、しかも華やかな経歴よりもむしろ「たたき上げて」指導者として豊かなキャリアを積み重ねて来た2人が、W杯史上1000試合目のメモリアルマッチで対戦する巡り合わせとなった。

 
 監督会見、あるいは監督のコメントには様々な情報が潜んでいる。
 W杯前の国内合宿に入る直前、日本代表の「頭脳」=分析班を取材した際、W杯での対戦国、戦術を考える時、それを決断する監督の思考、意志、人格、実際の交代がどうなったかを徹底的に分析している、とあまり明かされてこなかった分析班の仕事の中身を教えられた。
 22年のカタール大会に向けてテクニカルスタッフに加わった中下征樹氏(今大会は6人帯同)は「対戦相手の特徴、攻撃守備、セットプレー、交代、それから監督の考え方などを深掘りしていって、短く、簡潔に(情報を)揃えていく形になります」と説明。分析というと対戦相手の特徴、攻守、セットプレーは想像できる。そのうえに「交代と監督の考え方の深堀り」と、傾向ではなくて深堀、とした表現が興味深い。

 特定のデータや行動パターン、対象となる人物の特性や人物像(プロフィール)を予測する「プロファイリング」の手法だろうか。

 14日のダラススタジアムでオランダが2-1と1点をリードして迎えた後半25分、クーマン監督はここでメンフィス・デパイ、トゥーン・コープマイネルス、クインテン・ティンバーの3人を一気に投入する「3枚替え」に出た。
 オランダの3枚替えの直前、日本は引き気味だったオランダの突破に伊東純也を投入。クーマン監督の3枚替えについてオランダの記者たちは試合後の会見でとても厳しい質問をぶつけていたが、クーマン監督の交代について日本代表の分析班の情報収集と選択、森保監督、スタッフが読んでいたのが2度追い付いたひとつのポイントだった。
 後半25分の交代でかえってオランダの後ろが重く、クーマン監督の意図とは異なり前線のスピードを欠いたのを見るやいなや、日本はDF渡辺剛を冨安健洋に、ファールでひざを痛めた久保建英を小川航基に、堂安律を菅原由勢に一気に3枚替えを逆に打った。結果的に交代選手たちが日本の同点を大きく引き寄せ同点に。オランダ戦で常に先に、先に交代カードを切って世界ランキングで上位の強豪国を後手に回したのは森保監督のほうだった。

 分析班はきっと、数日前急きょ監督に就任したルナール氏のプロファイリングも行い、25年のW杯最終予選で対戦した試合(サウジアラビア監督、日本ホームで0-0)、もしかするとフランス女子監督の時代の傾向と対策もしている。分析対象には森保監督も入っていると聞いた。恐らく、相手に読まれにくい采配のためのセキュリティとしてだろう。
 ロシア大会から3大会連続で分析チームをまとめる寺門大輔氏に分析が一番難しい監督は誰かを聞いてみた。寺門氏は少し表情を柔らかくしながら「森保監督でしょうか、なかなか難しいです」と言った。
 選手の活躍はもちろん、両監督が見せる激しい駆け引きも2戦目の重要なカギだ。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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