W杯へ踏み出す日ー8大会連続出場の成熟度が試される’リーダーズジャパン’ 「W杯に向けチームが成熟するため、スタッフでディスカッションを重ね、選手とも濃密なコミュニケーションを重ねた。対話力は日本代表の強みだと自負している」名波浩コーチが合宿を前にコメント発表
25日、北中米W杯に向けて日本代表のトレーニングキャンプがいよいよ始まる。
5月15日に発表された26人のメンバー表はファンの皆さんも目にするが、このメンバー表には実は外部には公表されない代表のスケジュールが2ページに渡って記されている。
31日の壮行試合となるアイスランド戦(国立競技場)を経て、事前にキャンプを張るメキシコのモンテレイ、ベースキャンプとなるナッシュビルでの練習、W杯初戦となる6月14日(日本時間15日)のオランダ戦から予選ラウンド、そこを突破してのトーナメントも7月19日の決勝のマッチスケジュール、移動フライトなど予定表は向こう1カ月半先まで記されている。
今大会から48カ国出場となり3位抜けも可能となる。過去の大会でも決勝までのスケジュールは書かれていたが、3位抜けの場合のマッチスケジュールまで記された今回の1カ月半にも及ぶ日程表は、選手だけではなく監督、スタッフ、関係者すべてが「いつ、どこで、どこと対戦しようが準備はできている」との強い意志を象徴するかに読める。
選手のコンディションや戦術だけがW杯の行方を決めるわけではない。この2週間、スタッフの取材が行われた。分析を担当するスタッフ、コーチ陣にも日頃は伺い知られない役割、内容を聞く興味深い機会となった。
テクニカルスタッフの中下征樹氏は、日本代表が森保一監督の指揮下で積み上げてきた分析スタイルについて「たとえ中2日の試合であっても超特急で(情報を分析、整理し)仕上げることができる。自分たちだからこそできる大きな‘武器’になると思う」と言う。
移動や環境の変化が厳しい今大会、選手たちのコンディションが最大の焦点にはなる。同時にスタッフの連携や想定外を消す作業、スピードも高いレベルで求められる。中下氏のコメントには6人によるテクニカル部門の自信がにじむ。
18年ロシア大会から最も長く分析を担当する寺門大輔氏は「私たちは情報にサムライのユニホームを着せて送り出す。選手の目線、視点で積み上げたものを自信と確信をもって伝えたい」と話し、すでに日本を除く47か国の分析をしているとした。
98年のフランス大会で初めてW杯出場を果たしてから8大会、今回は日本代表選手、スタッフ、組織力、日本サッカー協会の闘いの成熟度を示す大会にもなるはずだ。
キャプテンの遠藤航、5大会連続出場を果たした長友佑都、じん帯損傷の大けがを負って大会に出場できない南野拓実はリハビリを行いながらチームに帯同しサポート役を務める。31日のアイスランド戦限定での招集となったが、前回大会キャプテンの吉田麻也も加わる。3月のイングランド遠征後にスタッフに新加入した中村俊輔コーチ、10年南ア大会からロシアまで3大会連続でキャプテンを務めた長谷部誠コーチ、8大会のW杯で歴史を刻み様々な「経験の引き出し」を持った「リーダーズ」の存在も今大会のチームの圧倒的な特徴だろう。
名波浩コーチが24日、体調不良で取材に対応できなかった代わりに協会を通じてコメントを発表した(中略)
「昨年の最終予選が終わってからも、目の前の一戦一戦で勝利を目指すことを忘れずに、そのうえでワールドカップに向けてよりチームとして成熟するため、スタッフでディスカッションを重ね、選手とも濃密なコミュニケーションを重ねてきました。こういった対話力は日本代表の強みのひとつだと自負していますし、ピッチ上で起こるあらゆることに対応するためには不可欠な要素だと思っています。選手が最大限の力を発揮できるよう、ここからさらに深みのある関係を築いていこうと思います」
対話力が代表の強みとのコメントにも、コーチ陣の準備への自信がうかがえる。
昨秋、「日本代表はベスト4に進出できる」と予想した鹿島のクラブアドバイザーで2006年のドイツW杯日本代表監督・ジーコは、その理由を「今大会ほど不確定な要素が多いW杯はかつてないはず。だからチームマネージメントの底力が試されるだろう。8年2大会で指揮を執ってきた森保監督にはこの点で大きなアドバンテージがあると思うからだ」と激励。ジーコは組織力の成熟度について2012年からフランス代表を率いるデシャン監督や、3大会目となるクロアチアのダリッチ監督の名前もあげていた。
対戦相手、高度な戦術と向き合い、天候や厳しいコンディショニングと向き合い、ケガや自分たちの戦い方とも向き合う。何よりも日々目まぐるしく変わる「チーム」という難しい生き物と向き合う特別な1カ月だ。
7月19日の決勝を目指して代表は初日、どんな1歩を踏み出すか。


