スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2026年2月16日 (月)

スピードスケート女子500㍍で’4組目’の高木美帆が銅メダルを獲得 唯一無二のオールラウンダーの底力を見せつける

 自身が樹立した日本の五輪史上最多獲得数を更新する銅メダルを獲得した高木が、レースではメダル候補たちが揃う後半ではなく序盤も序盤の「4組目」に登場したので不思議に思ったファンも多かったはずだ。
 今季のW杯500㍍へ出場回数が少なくポイントを取っていなかったため4組目に。この時間では多分アップもしていなかったメダル候補たちが腰を抜かすようなタイム(37秒27)をたたき出し、「さあ皆さん、こちらを目標タイムです」と、大きなプレッシャーをメダル候補たちに与えた。
 12組目のレールダム(37秒15)、15組目のコム(36秒49の五輪新)とオランダ勢に抜かれたが、テレビ解説をしていた加藤条治氏が「いや・・・凄いなあ・・・」と呟いていた理由は9つ目のメダルはもちろん、ほとんど出場していなかったスプリント種目に、しかも序盤で滑って好タイムでメダルを獲得してしまうオールラウンダーの恐ろしい底力についての感想だったのではないか。4組目のメダリストが、いかに凄まじい勝負勘と絶対に失敗できない緊張感を伴う500のスタートを含めたスケート技術の幅、メンタルなど全てを凝縮して臨んだかよく分る。世界的に例のない唯一無二の「オールラウンダー」の完成品でもある。
 メダル獲得は18年の平昌五輪からで同大会の1500㍍で銀、1000で銅、パシュート(2400)で金、22年の北京は1000で金,500と1500、さらにパシュート(2400㍍)で銀、今大会は500の銅と1000の銅を手にしている(金2,銀4、銅2)。これは陸上の同じトラック種目で表現するなら100㍍から400,800、1500までメダルを獲得しているのと同じイメージだ。想像を超える。
 前回北京五輪に49歳で出場したドイツのレジェンド、ぺヒシュタインとスピードスケート女子史上歴代2位となる9で並んだ。92年のアルベールビル五輪以降8大会で9つのメダルを獲得。彼女は3000㍍で金、銀、銅、5000㍍で金3、銀1、銅1、パシュートで1と長距離のエキスパートだ。

 スピードスケート女子では史上最多となる13個のメダルを持つのは北京五輪1500㍍で高木が敗れたイレイン・ブスト(オランダ)。初出場の06年トリノ五輪から北京まで5大会で金6、銀5、銅2、メダルは1000、1500,3000、5000とパシュート。高木のライバルも中長距離全てをカバーするオールラウンダーだが五輪で500㍍は滑っていない。
 高木は今後パシュートの決勝進出をかけてオランダと対戦し、平昌、北京の2大会で金メダルを獲得できなかった1500㍍も控えている。500㍍のメダルを大きな自信に、4度目の五輪は偉大なゴールに向けてラストスパートに入る。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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