スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2026年2月17日 (火)

4カ月前、「金メダル4個、メダル総数9個、入賞数20を目指す」と宣言した複合団体の伝説の金メダリスト 言葉通りスキーが日本選手団を牽引するミラノ大会 17日、スノーボードHPの戸塚優斗ら帰国

 ミラノ・コルティナ冬季五輪のスノーボードハーフパイプ男子で金メダルを獲得した戸塚優斗(ゆうと、24=ヨネックス)、初出場で銅メダルを手にした19歳の山田琉聖(りゅうせい、チームJWSC)、2度目の五輪で銅メダルを獲得した女子の小野光希(みつき、21=バートン)の3人が羽田空港に帰国しそれぞれがオリンピックを振り返った。3人の晴れやかで緊張感からようやく解放された笑顔は胸にかけたメダルと同じに輝いてみえた。

 戸塚は初出場の18年平昌大会は11位、22年北京大会も10位と、メダル候補にあげられながら結果に繋がらなかった。当時の自分にどんな言葉をかけたいかを聞かれると、「つらくて、勝てないし、思った滑りができなかった。走り続けて積み上げたものが今回は結果に出た。やっていることは間違っていないし、報われるよって伝えたい」と、過去2大会の帰国時の風景を思い出したのかしみじみと答えた。山田は「4年後に向けてもやることは変わらずに自分の持ち味を出していきたい」と、オリジナリティあふれるルーチンでメダルを獲得した自信をのぞかせた。
 小野は前回がコロナ禍で無観客だった光景に触れ「今回は応援してくれる人が多くて、すごく頑張りたいと思えた」と、パリ五輪に続きコロナ禍から復帰した五輪の価値を噛みしめた。
 これから連日、選手たちが帰国し多くのメディアでメダルを披露する毎日となる。
                

               好調の日本のメダルラッシュを引っ張るスキー

 17日までに日本選手の獲得メダルは金メダル4、銀メダル5、銅メダル9で総数18個に。前回の北京大会にここで並んだため冬季史上過去最多は確実視される。メダル総数で1位のノルウェー28,地元イタリアの23,アメリカの19に続き、参加94カ国(地域4)のうちでも単独4位に立ち、ウインタースポーツ王国とアメリカに迫る好成績となっている。
 そんな好成績をけん引するのがスキーだ。
 総数18のうち、12個を獲得している(フィギュアスケート4、スピードスケート2)。全日程を終えたジャンプで銀1、銅3。新種目のスーパー団体は雪にメダルも埋められてしまったが(小林陵侑 と二階堂蓮)、男子のノーマルヒル、ラージヒル、女子のノーマルヒル、混合団体でメダルを確実に獲得し日本のジャンプの安定感をさらに強固にした。
 スノーボードはジャンプを上回る6となり、フリースタイルスキーでは堀島行真が2つのメダルを獲得。創設から100周年を迎えた全日本スキー連盟は今夏、「全日本スキー・スノーボード連盟」に改名する。スノーボードの大躍進は新たな知名度の浸透にも大きな後押しとなるに違いない。

 昨年10月、100周年記念式典が都内のホテルで行われ、ミラノ五輪の強化責任者、河野孝典競技本部長がミラノでの目標を壇上で宣言した(ここが初出ではなくほかの機会にも説明している)。
 コロナ禍以降、アスリートたちの結果が出ない場合、誹謗中傷が寄せられる件数が一気に増したという。こうした嫌な風潮に、関係者が事前にメダル数や目標を掲げるのを避ける傾向が強くなった。昨年の東京世界陸上でも日本陸連は目標メダル数や入賞数を明確にはしなかった。オリンピックでもこうした流れで選手にあえてプレッシャーを追わせないように努めている。(今夏の)「W杯で優勝を目指す」と監督をはじめ選手たちが臆せず発言しているのはサッカー日本代表くらいだ。
 そうしたなか、スキー連盟の河野孝典競技本部長は100周年記念式典ではっきり目標を口にした。記念パーティーなのでもごもご言ってもいられなかったと思うが、それでも久々に聞いた数値目標は胸をすくものだった。
 「金メダル4個、メダル総数9個、入賞数20以上です」と壇上のスクリーンにも映し出されると会場からも拍手が沸いた。金メダルは98年長野大会で3、メダル総数と入賞数は22年北京大会の8個と19が最多(全てスキー連盟のもの)で、「(五輪に向けて)新たな目標を立てて進んでいる」と、過去最多の高い目標を掲げた。
強化体制も整備した。

 複数の金メダルを狙える「Sクラス」を強化重点種目の最高位として、スノーボード・ハーフパイプ男女、同スロープスタイル・ビッグエア男女が入る。
 「Aクラス」にはノルディックスキー・ジャンプ男女、フリースタイルスキー・モーグル男女、スノーボード・アルペン女子、「Bクラス」にはノルディック複合男子、フリースタイルスキー・スロープスタイル・ビッグエア女子が選ばれた。
 連盟会長は長野五輪ジャンプ団体の金メダリストの原田雅彦氏、そして92年アルベールビル、94年リレハンメルでヨーロッパが絶対的存在のノルディック複合団体で連覇の偉業を果たした河野氏が強化担当責任者。2人の金メダリストが連盟のトップとして目標を明確にして活動するメリットはスポンサーはじめ関係者にも訴えかけ、委縮していた日本のスポーツ界全体の背中をも押してくれるのではないか。競技スポーツはやはり目標があってこそだと。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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