Jリーグ 秋田豊・前監督のパワハラ問題でJ3高知ユナイテッドにガバナンスの不備を理由に罰金100万円とけん責処分 秋田氏はけん責相当
7日、JリーグはJ3の高知ユナイテッドSCの秋田豊・前監督が、外部の弁護士で構成された調査委員会に選手、スタッフへのパワハラがあったと認定された問題について、クラブの管理監督義務違反を「Jリーグの社会的信用を毀損した」と認め同クラブに100万円の罰金とけん責処分を科すと発表した。けん責は始末書を取り、将来を戒めるもの。
今年2~6月、秋田前監督によるハラスメントに該当する行為を選手が訴えたにもかかわらず、強化部、コーチ陣のけん制機能がまったく効かず、むしろ秋田前監督への権限が集中する体制構築が優先され、問題の放置、ハラスメントが継続されたガバナンスの不備を重く判断。 秋田・前監督はすでに9月23日に退任したためJリーグの懲罰権が及ばないが、本人には「けん責」相当に該当すると通知したという。
この件に関連し、クラブへの処分はJリーグで終了するが、秋田・前監督個人の(旧)S級ライセンスの発給ついては管轄する日本サッカー協会(JFA)に報告があり、その後議論されるプロセスが残る。過去には、パワハラ行為が認定された指導者へはプロライセンスの一時停止、研修の実施などが行われてきた。
影山雅永・日本サッカー協会技術委員長は1日の会議後、「世界的にも(FIFAの会議で)プロラインセンスか子どもたちのライセンスか関係なく、どのカテゴリーであっても年に一度、指導者は必ずセーフガーディング(ハラスメント防止や安全を最優先する指導の研修)を必ず受講すべきとの認識が浸透している。日本も同じ方向で指導者ライセンスをより良いものにしたい」と、ライセンス保持者の指導方法をJFAとしても充実させる方針を明言している。
今回、高知SCの調査委員会で5つもの言動がパワーハラスメントと認定された秋田氏が「(パワハラの認識はなく)選手のためを思って強い態度、言葉を発した」と会見でも依然話しており、指導における錯誤を露呈した形となった。近く技術委員会でも議論される可能性がある。
高知SCは、元日本代表でW杯の初出場メンバーである秋田氏をJ3昇格の今季招へい。期待は大きかったが、ハラスメントの訴えは早い段階で出ていたという。
山本志穂美・前社長が監督を休養とし、その間、第三者委員会を立ち上げ外部に調査を委任。数十人の聞き取りを行い、これを報告書にまとめてJリーグに報告したプロセスは、過去のJクラブの類似する案件と比較しても、あるいはJ3昇格1年目のクラブとしても、正しく迅速なものだったと評価される。
一方、報告書が完成してから秋田監督、関係者の処遇をどう決断するかにおいて時間がかかった。県や、地元のスポンサーなど一部ステークホルダーに、ハラスメントやセーフガーディングへの認識が甘さがあり、サポーターも巻き込んで秋田体制を堅守しようと動いた関係者もいたのではないか。秋田監督の退任と山本社長の退任が同時に、まるで応酬人事のようだった背景にもガバナンスの不備は明らかだった。
Jリーグの裁定委員会が今回、「Jリーグの社会的信用を損ねた」と判断した理由は、全国60クラブにまで発展したJリーグの在り方にも今一度、踏み込んだとも読み取れる。クラブは誰のものか、なぜ守られるべきなのか。


