スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2025年9月13日 (土)

男子35㌔競歩で銅メダル獲得の勝木 大会直前も朝霞駐屯地で逆暑さ対策「東京だけを見据えて暑さ対策した。東京で競歩って面白いんだと見せたかった」 10個目のメダルに谷井孝行競歩ダイレクター「必ずメダルを取って日本チームにいい流れを作りたかった」

 厳しい条件下でのゴール後、一時体調を崩したという勝木隼人(自衛隊体育学校)だったが会見には回復した様子で出席し、充実していたレース戦略を振り返った。多くの選手が暑さ対策で苦戦するなか、勝木はこの大会を目指してあえて「涼しいところにはいかず、水や氷を取らずにどこまでやれるか、といったトレーニングを東京だけを見据えてやってきた。それがアドバンテージとなった」と、神経質になりがちな暑さに「逆対策」で臨んだと明かした。大会直前の合宿も7月の菅平の後、8月のもっとも暑い時期に自衛隊ホームの朝霞駐屯地で練習を行った。
 レース前に立てた戦略通り、序盤ペースをリードして先頭集団の人数を絞り、一端ペースを落としてさらにペースをあげて5人、さらに終盤でメダルと思って集団をリード。「詰めは甘かった。簡単に勝たせてはくれませんね。(沿道に観客がいて)東京でやる競歩で、競歩って面白いん
だと皆さんに見せたかった」と充実した表情を浮かべた。
 湿度がスタート時点で80%に達する一方、気温が25度前後と暑さを感じにくかったために「こうした条件がレースをさらに難しくしたと思う」と、競歩チームの谷井孝行競歩担当ディレクターは分析。谷井ディレクターで始まった(15年)日本の世界陸上競歩でのメダルを6大会連続10個目とプライドをつなぎ「昨年のパリでメダルを逃し、今回は自国開催で必ずメダルを取って(日本チームにも)いい流れを作りたかった」と、難しいレースを終えて安堵していた。
 女子では、梅野倖子(LOKCOK)が2時間56分28秒で日本人ではトップの15位に。ブタペスト大会では20㌔で35位と距離が伸びた今大会で力を見せた。初出場の矢来舞香(千葉興業銀行)は3時間1分27秒で20位、日本代表最年長での出場となった渕瀬真寿美(建装工業)は3時間3分29秒で21位に続いた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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