スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2025年9月18日 (木)

世界陸上6日目ナイトセッション18日=国立競技場 「(1500㍍予選落ち後)怖くて辛くて心細かった。ゆまちゃん(山本)がラストピースをはめてくれた。2人で作ったレース」1500㍍のショックから反撃の田中希実 山本の果敢なペースで予選突破

 後半に入った世界陸上のこの日のトップに女子5000㍍予選が行われ、田中希実(ニューバランス)、山本有真(やまもと・ゆま 積水化学)、10000㍍で2大会連続での入賞を果たした(23年7位、今大会6位)廣中璃梨花(日本郵政グループ)が出場した。  1組目の田中は山本とともに序盤からトップ速いペースでを引っ張り、1500㍍で予選落ちを取り返そうという積極的なレースを展開。残り1周を予選通過順位の8人で通過し余裕をもって14分47秒14 の5位で決勝へ進出した。山本、廣中は予選で敗退した。
 決勝進出を決めた田中は取材に1500㍍で予選落ちした後の心境を「喪失感が大きく、(5000㍍予選に臨むのにあたって)怖くて、辛くて心細かった」と心境を吐露。しかしその気持ちをレースに向けて変えてくれたのが同じ組で走った山本の一言だったという。
 「前日(17日)にゆまちゃんが(山本)私にできることがあれば(ペース配分)・・・と言ってくれたことで(レースプランを考えるための)最後のピースがはめられた。2人とも世界で戦うためのテーマがはっきりしました」と、山本が果敢にレースを引っ張ったことでペースを維持し2人で押せた。その結果、残り1周時点で先頭グループは予選突破の8人にすでに絞られており田中は作戦通り通過順位を確保した。
 田中は「2人で作ったレースだったよ」と山本をゴールで待って声をかけ、山本も「情けない(レース)という気持ちでしたが(今は)嬉しい気持ちが出てきた。田中さんに予選を通過して欲しかった」と納得した表情を浮かべた。
 決勝に向けて田中は「闇に落ちてしまう(自分のレースができず落ち込む)のはもうこりごり。全てを出したい」と、強い気持ちを全面に出していた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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