スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2025年9月20日 (土)

大会8日目モーニングセッション 女子20㌔競歩で藤井菜々子がコーチへの喪章を胸に日本女子競歩史上初のメダル獲得 「女子はまだまだと言われ絶対に私がメダルを取ると思ってきた」レース後、ベテランの岡田の首に銅メダルをかける 男子20㌔競歩、円盤投げ予選も実施

 国立競技場発着外苑内18周(スタート時の気温21.3℃。湿度91%)
 女子20㎞競歩で藤井菜々子(26=エディオン)が1時間26分18秒の日本新記録で日本の女子競歩史上、世界陸上、五輪を通じて初の銅メダルを獲得した。20㌔競歩は6大会連続の世界陸上でこれを最後と位置付けて臨んだベテランの岡田久美子(33=富士通)は1時間30分12秒で18位、柳井綾音(21=立命館大)は1時間35分44秒で37位だった。 藤井が21年から指導を受けてきた川越学コーチが8月、脳卒中で急死(享年63)。喪章を付けてレースに臨んだ。
 2026年から国際大会の20㎞競歩はハーフマラソンの21.0975㎞に距離変更がされるため今大会が最後の実施となる。藤井はゴール後岡田を待って、自身の銅メダルを「岡田さんのお陰でここまでこられました」と、6大会連続出場の岡田の首にかけ、岡田も「言葉にならない」と涙を流した。岡田はこの日を(自分のなかで)「最後のレース。メダルを取ってくれたので止められると思った」と安堵した様子だった。
 取材の前、藤井は大きく深呼吸をし「今大会は本気でメダルを狙って、勝ちに来た。思い描いたレースが出来たので大感激です」と 喜んだ。先行する日本の男子競歩について「女子はまだまだと言われてきたので、必ず私が取ると思ってきょうまで練習してきた。次の大きな一歩に踏み出せた」と早くも金メダルへの挑戦を口にしていた。

 金メダルはペレス(29=スペイン)が35㎞での金メダルと合わせて世界陸上初となる2大会連続二冠の偉業を達成した。
 
 モーニングセッションでは女子に続き男子20㌔競歩が行われ初出場の吉川絢斗(24=サンベルクス)が1時間19分46秒で7位に入賞と健闘した。世界陸上に3度出場した丸尾知司(33=愛知製鋼)は1時間20分9秒の9位と惜しくも入賞は逃した。
 2021年東京五輪銅メダリストで20㌔競歩の世界記録保持者、山西利和(29=愛知製鋼)は、レース後半、ペースを上げて集団を引きちぎったところで3度目の警告。ペナルティゾーンでの2分間停止が大きく響いて1時間22分39秒の28位にとどまった。前回ブタペスト世界陸上24位の悔しさを晴らすためにと臨んだ地元開催の世界陸上だったがさらに悔しい結果となった。
 2007年の大阪世界陸上以来、男子円盤投げでの出場を果たした日本記録保持者(64㍍48)の湯上剛輝(トヨタ自動車)は56メートル40の19位で予選敗退した。生まれつき両耳が聞えにくい難聴を持つが今大会で史上初めて、デフアスリートとして世界選手権への出場を決める「ボーダレス」に挑んだ。
 湯上は取材に「本当に夢のような時間だった」と感激。11月、東京ほかで行われるデフアスリートによるオリンピック「デフリンピック」に出場する。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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