スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2025年8月22日 (金)

ボクシング39歳アマ選手練習後に急性硬膜下血腫で開頭手術 日本ボクシング連盟が公表 安全管理と再発防止にアマプロ合同での医事委員会を22日開催

22日=東京新宿区(JSOS) 日本ボクシング連盟が会見し、競技復帰を目指しトレーニングを行っていた39歳の男性が8日のスパーリング後に意識レベルが低下し救急搬送され現在も集中治療室で経過観察中だと発表した。男性はヘッドギアを付けており予定していたスパーリングを切り上げて休憩している際に意識レベルが下がったという。急性右硬膜下血腫のために千葉県内の病院で開頭手術を受けた。
 会見を行った仲間達也会長(44)は「一刻も早い回復をお祈り申し上げたい」とし、会見冒頭ではプロで今月亡くなった2人の選手を追悼。会長によると、当該男性は東京都連盟に役員登録し引退と現役復帰を繰り返しており、41歳の年齢制限(強制的に引退)を前に、全日本社会人選手権の予選への出場を見据えて14年以来11年ぶりの競技復帰を目指して都内のジムに通っていた。
 連盟によると、当該男性は2008年の練習中に頭痛を訴え、検査で小さな硬膜下血腫が判明。しかし開頭手術には至らずに治癒していた。現行のルールでは過去に脳内出血を経験した選手は試合に出場できないが、医師でもある仲間会長は、「現時点で当該男性がどこまで復帰を本格的に考え準備したのかが分からないが」としたうえで、本人、周囲はそのルールを知らず「(ルールを)すり抜けてしまった可能性が高い」と、改めてルールの周知徹底を課題とした。日本連盟は先に緊急医事委員会を開き、35歳を迎えた選手と5年以上のブランクがある選手が大会に出場する際、脳のCT検査か、MRI検査を受けるプロセスを義務付けた。
 プロボクシング界は2日に東京・後楽園ホールで行われた試合後、1つの興行で2人の選手が命を落とす最悪のリング禍の衝撃に揺れる。昨年の事故で今年1月にも選手が死亡しており、選手の安全とボクシング競技の存続は大きな岐路に立っている。仲間会長は「きちんと安全対策をしていかないと危ない。プロアマ通してきっちりとした形で対策する」と、プロの試合を統括する日本ボクシングコミッションと連携し、原因究明や再発防止策、また事故に関するデータの収集について話し合うため22日夜、プロアマ合同の医事委員会をオンラインで開催すると明かした。

 

 

 

 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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