スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2025年7月21日 (月)

Jリーグ 東京V対町田の「東京クラシック」熱帯夜の一瞬を巡る駆け引きで町田が勝利 短期間で2度の脳しんとうに見舞われた西村と黒田監督に、ヴェルディ綱島がかけた言葉とは・・・

20日=味の素スタジアム(観衆22217人) 天候晴れ 気温29.6℃ 湿度72% 東京ヴェルディがFC町田ゼルビアとの「東京クラシック」に臨んだ。0-0で折り返した後半8分、町田の西村拓真と、ヴェルディのDFでE-1東アジア選手権で存在感を示した綱島悠斗がボールを巡って空中戦での競り合い、ともに頭部を強打。2人がピッチでの治療の後、綱島は試合に戻った。一方裂傷も負った西村は一度はテープを頭に巻いて試合に戻ろうとしたが、7月5日の清水戦でも脳しんとうのために途中交代したためE―1選手権を辞退しており、慎重な判断から脳しんとうによる交代となった。リハビリを続けてリーグ戦に戻った西村には気の毒で心配な状況となったなか、試合後、黒田監督に記者会見でこの件を聞いた。
 監督は、「本人は止血してテーピングを巻けばやれると言っていたが、後遺症やその他の問題が起きることを懸念しての判断(交代)をした。現時点ではドクターの見解はまだ聞いていません。この試合で少し休みに入るというか、中断期間がありますので、しっかりとケアする時間はある。まずは(西村を)休ませたいと思っている」と話し、短期間で2度の脳しんとうに見舞われた西村のコンディションを慮った。
 また試合後には、綱島がミックスゾーンで取材に応じ「(西村が)脳しんとうでE1に来られなかったと聞いていたので、(同じ脳しんとうを自分との競り合いでしたことに)申し訳ない、という気持ちはピッチで伝えました。(ベンチ前で見守っていた)黒田監督にも申し訳ありません、と気持ちは言いました」と、町田のベンチ前でのやり取りを明かした。

 湿度が80%にも達するなかでの過酷な試合は、この脳しんとうで中断した「時計が止まった8分間」が動き出した勝負の行方を突如決める結果に。2人の治療が終わり後半15分に西村が交代すると、町田は、時計の動き出しに照準を定めていたと黒田監督は会見で明らかにした。リスタートした後の18分、ゴール前でこぼれたボールを町田のDF菊池流帆がエリア内で捉え、右足で冷静にワンバウンドさせてシュート。これがゴール右上に入って決勝点となった。
 町田は前後半シュート6本、東京Vは終始試合の主導権を握ってシュート15本を打ちながら無得点で終わった。城福監督は試合後「あそこでスキを作ってしまった」と唇をかみ、黒田監督は「飲水タイムも含めて、(リスタート直後は)失点もしやすく得点もしやすい。勝負の際を選手がしっかりつかんでくれた」と5連勝と同時に、流れを全員で把握する難しい判断に選手を称えた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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