スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2025年3月21日 (金)

「耐えるところ耐えて、刺すとこを刺して・・・」1G1Aプレーヤー・オブ・ザ・マッチ久保建英 ‘刺す’と表現した圧巻の個人技の鋭さ 森保監督「(W杯で)トロフィーをキャプテンが掲げているのをイメージできる」

 前半、遠藤のゴールがVARでハンドと判定されノーゴールとなった時間から、バーレーンは逆に加速した。バーレーンのロングボールからセカンドボールを拾われてしまい、どうしてもボールを追っている時間のほうが長くなる。ホームでもっと攻撃的に、ゴールを決めて勝ってW杯を手中にしたいと思っていたはずだが、コンディションで相手が上回っているのは明らかだった。バーレーンが来日したのは13日と1週間もの時間をかけて調整しており、反対にホームであるはずの日本代表のメンバーが揃ったのは18日。試合まで2回の練習を組むのが精一杯の「逆ホーム」ともいえる状況だった。
 森保監督は「バーレーンの、時差、気候、環境への対策は万全と分かっていた。難しい試合になると選手と共有し我慢強く、粘り強く戦ってくれた」と選手の忍耐強さ、粘りを称賛した。イラ立ちもストレスも抱えて選手が戻って来るはずのロッカーで、森保監督は選手に「前半はよくやった。自分たちで崩れず無失点、いい戦いをしてくれた」と、ポジティブな声をかけたと会見で明かした。外から見ている以上に難しい相手と組んだ前半を0-0で折り返せば、相手のペースが落ちるスキを付いて膠着状態を打破する「個人技」をより強く発揮できる、と想定していたからだろう。
 「誰かが状況を変えてくれる。タケ(久保)に個の力で局面を打開して欲しいと思って起用した」と話す。
 後半、鎌田へ送ったアシストと自らのスーパーなゴールでこの試合のベストプレーヤーに輝いた久保は森保監督と並んで会見に出席し、日本代表の試合運びを自身のプレーと同じく「鋭く」表現した。
 「前半から難しい戦いになると分かっていた。バーレーンはガルフカップで勝ってここに来ている(ので勢いがある)。(日本は)耐えるところを耐えて、刺すところを刺して(試合を)できたと思う」
 忍耐、ワンプレーへの集中力、相手のスキを絶対に逃さなかった勝負の駆け引き。刺すとは、この日の久保の鋭さを表現した言葉だ。
立ち上がり、ハンドは取られたが遠藤のゴールの起点は久保のCKだった。後半21分、「ひねくれ者同士、これから2人で仲良くやっていきたいと思います」と試合後ユーモアたっぷりに表現して笑った、鎌田とのコンビネーションからアシストを送って先制。42分には、ショートコーナーから戻ったボールを角度のない場所からニアを抜く圧巻のクオリティで日本のW杯8大会連続出場をもたらした。喜びのあまりユニホームを脱いでイエローカードを受けたが、「皆んなをとにかく安心させたいという気持ちだった。難しい試合でちょっと空回りしている時に、1-0にできて余裕も出た。2点目は嬉しかった」と喜んだ。
 前回大会は「まだ幼かった」と振り返る。この3年で選手としての自信と、人間としてのたくましさと両方を手にした。前回のW杯で悔しい思いをした時、川島、長友のベテラン勢に寄り添い、支えられ「2人には感謝している」と振り返る。
 森保監督が試合後、「突破はしましたが、実はもう選手たちが次を目指すギラギラ感がスゴイ」と舌をまくほど、選手の目標は高く、そのためのプロセスへの意識も高い。日本サッカー協会は「最高の景色を2026」とW杯に向けたスローガンを試合後に発表した。久保はその景色を「世界一」と言い切り、森保監督も「決勝の舞台で戦い、キャプテンがトロフィーを掲げている様子が思い浮かぶ」という。最高の景色というパステル調の風景ではない具体的なイメージをチームが抱いている。過去6大会にはない、未来を映し出す出場決定試合となった。

[ 前のページ ] [ 次のページ ]

このページの先頭へ

スポーツを読み、語り、楽しむサイト THE STADIUM

増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

最新記事

カテゴリー

スペシャルインタビュー「ロンドンで咲く-なでしこたちの挑戦」