スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2025年3月15日 (土)

WEリーグ「さいたまダービー」浦和Lが大宮Vを3-0で下して暫定首位に浮上 「むちゃくちゃ悩んだんですが、思い切り蹴って来い!と」自分の6点目より若手の成長を選んだ高橋はな PKを18歳の藤﨑に渡す

15日=NACK5スタジアム大宮(観衆3909人) WEリーグ第14節で、現在最下位の大宮アルディージャVENTUSが三菱重工浦和レッズレディースをホームに迎えて「さいたまダービー」が行われた。浦和は33分、FW高橋はなが「DFとしての原点に帰ろう」と、早い寄せから自ら中盤でボールを奪取。それを伊藤美紀に預けて前線へ上がると、伊藤からのボールを右足でシュートしこれが先制点となって浦和が主導権を握った。
 後半32分には20歳のボランチ・角田楓佳の直接FKから、こぼれ球を島田芽依が右足で押し込んで追加点を奪う。43分には、前回のダービー(24年11月17日、4-0)でも2得点をあげた18歳の藤﨑智子が自ら獲得したPKを決め3対0として暫定ながら首位に浮上した。

  終了真際のPK獲得の際には、高橋はなが一度は手にしたボールを藤﨑に渡し背中をポンと押して蹴るように促した。高橋は試合後、「本当はむちゃくちゃ悩んだんですよ・・・もちろん自分で蹴って点を取りたかった。思い切り蹴って来い、と声はかけました」と、いつもの笑顔で18歳にPKを譲ったシーンを振り返った。
 PKを獲得した藤﨑は18歳でこれからの浦和を背負っていくためにも大きな成長が期待されている。高橋はこうした要素を、PK獲得からキックまでのわずかな時間の中で考え尽くしたという。現在得点ランキングは5点で3位につけており、もしPKを決めれば6点となり上位の2人(大阪Cの矢形11点、INAC神戸スアレス7点)に迫る1点となったはずだ。
 「本当は私のボールを奪って、自分が蹴りますから!と言ってくるくらいでいいのかもしれませんが、きょうは藤﨑に自分で取ったPKを蹴ってゴールさせたいと思いました。自信になってくれたら嬉しいです」そう言って自分を納得させるようにうなずいた。楠瀬監督は試合後、「チーム全体で試合をマネージメントする力がよくなっている」と話しており、高橋の決断を含めたものだったのだろう。
「自分の今季6点目の可能性より、チームの未来、チーム全体での前進を選択する。浦和の層の厚さ、その理由を示すシーンだった。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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