スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年10月13日 (日)

サッカー日本代表最終予選で3試合連続ベンチ外の長友佑都の矜持 それでもチームを引っ張る姿に「誰もできない(仕事)からこそ、僕がここにいる」

13日=埼玉スタジアム 26年W杯北中米大会アジア最終予選で史上初の3連勝と絶好のスタートを切って首位に立つ日本代表は、サウジアラビアからの帰国後2日目となるトレーニングを会場の埼玉スタジアムで約1時間半行い15日のオーストラリア戦へ準備した。日本は最終予選スタートからここまで3試合で、過去、ロシア大会、カタール大会と2大会連続で黒星発進となった初戦、また3連敗中のサウジアラビアでのアウェーと2つの「鬼門」をクリア。また、前回カタール大会での総得点12点をすでに3試合で上回り失点0の圧倒的な強さを見せつけている。
 この日、冒頭のみ公開された練習で大きな声を出しチームのムードをあげていたのは38歳の長友佑都だった。9人ずつ3組で行ったボール回しでは前田遼一コーチ(43)がボールをそらすと「エーッ!、遼ちゃ~ん!」と、かつて最終予選をともに戦った同僚でありセンパイに声をかけ選手たちのリラックスした雰囲気を演出した。
 一方、練習後の取材対応では「リラックスだけでは何もならない。(3連勝で)自信を持つのはいいけれど、過信になってはいけない。オーストラリアは、(前回の予選は頭の3試合で2敗し)自分たちがその後6連勝して生まれ変わった時と同じような緊張感を持っている。それが怖いところでもあるし最終予選は甘くない」と、追い込まれたオーストラリアとのメンタル面での駆け引きをテーマに掲げる。
 自身ここまで出場機会がない。ベンチにも入らずスタンドから戦っているが、サウジアラビア戦でも「自分がピッチに立っているかのような身震いをした」と熱い思いを明かす。前半27分に見たチームメイトのディフェンスに「日本代表はこうやって戦うんだ、という魂を観た思いがした。あれが代表の基準だと思う」とした。前半27分、日本はゴール前のピンチに町田、三笘、守田、遠藤が体を張ってブロック。さらに町田、守田、遠藤、板倉で攻撃を封じる泥臭く、気持ちのこもったDFがその後の試合展開を決めた。
 「チームを引っ張るといっても出場機会もないなか腐らない。誰にでもできることではないのでは?」と質問を受けると、長友はきっぱり言った。
 「誰もできないからこそ、ボクがここにいる」

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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