スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年10月26日 (土)

なでしこジャパン韓国戦4-0で勝利 U17W杯優勝から10年後のなでしこデビューとなった遠藤優「大きな1歩。内田(篤人)コーチには、やったね!でも、と・・・」

26日=国立競技場(観衆1万2420人) パリオリンピックでベスト8に終わった「なでしこジャパン」のリスタートの試合となった親善試合「みずほブルードリームマッチ」韓国戦が行われた。新生、といっても代表監督が決まらないなか、佐々木則夫女子委員長が代行として指揮を執り、選手にとっては難しい面も多い試合となった。
 池田太監督では、3バックだったシステムを4バックに変更、「強気でアグレッシブにボールを奪いに行く攻撃的な守備を見せたい」(佐々木代行)と目標を置いたものの、序盤は韓国がボールを回し日本のバックラインと前線が大きく開いてしまうなど攻撃的な守備がなかなか発揮できない時間帯が続いた。
 均衡を破ったのはセットプレー。前半32分、長谷川唯のCKキックに北川ひかるが飛び込んでヘッドで決めた先制ゴールを奪うと、34分には藤野あおば、37分にも田中美南と5分で3点の猛攻撃でたたみかける力の違いを見せて前半を3-0で折り返した。
 後半は、パリ五輪のグループリーグ、ブラジル戦でアディショナルタイムにロングシュートで2点目を奪ってベスト8進出を決定付けた谷川萌々子がボランチに。11分には中盤で相手にプレッシャーをかけ、このボールを長谷川が奪取。右サイドの守屋都弥に展開し、長い距離を走って中央に詰めていった谷川が守屋からのボールにワンタッチでシュートを決めて4-0と試合を決めた。4-0となった34分、17歳以下の代表で活躍し長く代表には選出されていなかったMF遠藤優(三菱重工浦和レッズレディース )が守屋と交代、なでしこジャパン初出場を記録した。29日には千葉市内で韓国女子代表ともう1度トレーニングマッチを行う(非公開)。
 試合を観戦した宮本恒靖会長、
佐々木女子委員長とも次期監督について「年内には発表したい」と目標は示している。年内の活動はこれで終了する。この日、「WEリーグ」のカップ戦「クラシエカップ」も同時開催されているというスケジュールの不備で、国立競技場に足を運んだファンと、さらに多くのファンの興味を掴むチャンスを逸しており、新監督問題とともにこちらも宮本会長が推進する女子サッカーの改革には大きな課題となる。

          
「内田コーチに、’やったね、でもここからが大事だね’って声をかけられました」(遠藤)

 本来ならば「新生なでしこジャパン」と書きたいところだが、飛び立つ、にも、離陸するにも、キャプテン(船長、機長)がいないのでは威勢のいい表現もできない。新監督が決まらず女子委員長の佐々木氏が2016年以来のベンチ入りで代行、選手選抜も池田太監督が指揮を執ったパリ五輪にほぼ沿ったもので、全体練習も実質3日間のみ。実に中途半端な、選手には難しい親善試合となってしまった。そうしたなか、なでしこジャパンの中心的存在の長谷川、長野、この日も先制ゴールを決めた北川らとともに2014年のU17コスタリカW杯優勝を果たしながらその後10年、代表を遠ざかっていた遠藤が約10分間、なでしことして初のピッチに立った。
 「(出場時間が)短くても長くても自分の良さを
少しでも表現したい」と練習で話していた通り、サイドで積極的に前線にあがるなど良さを表現しようとした。遠藤は試合後、内田コーチに代表初出場を「やったね」と祝福してもらったと明かし、「でもここからが大事だね、って。本当にその通りだと思うし、1日1秒を無駄にせず、やっていきたい」と27年のブラジルW杯、28年のロサンゼルス五輪へ大きな一歩を踏み出した。日本代表を戦ってきた内田は「1試合で満足しないように」と言ったのだろう。遠藤にとっては、目指す港への難しくそれでも乗り越える航海が始まった。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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