スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年9月15日 (日)

近代五種初の銀メダル獲得 佐藤大宗、女子の内田美咲が五輪報告会 「車の窓を開けると、ワー!佐藤選手だ・・・と注目されることもなく・・・」メダルの反響がイマイチと苦笑 今後の競技発展にスポンサーの獲得を切望

15日=都内ホテル パリ五輪で日本勢初の銀メダルを獲得した近代五種男子の佐藤大宗(30)、女子で同代表の内田美咲(28、ともに自衛隊)がパリ五輪の報告会を行った。112年に渡って五輪で開催され、馬術(障害飛越)、水泳(200㍍自由形)、フェンシング(エペ)、レーザーラン=600㍍走った後にレーザーピストル、と5種目の得点と順位を競う厳しさから「キング・オブ・スポーツ」と称賛される同競技で佐藤は日本勢で初めてメダルを獲得。この日は、報告会やメディア出演など多忙な日程に「嬉しい悲鳴」を上げながらも「近代五種自体が日本ではまだすごくマイナーなので、これまで五輪が終わった後でも注目されることがなかったけど、今回は近代五種を知っている方が(メダル獲得で)ちょっとずつ増えてきている。このメダルは価値のあるものだなと思う」と五輪後の手応えを感じているという。
 しかし、自身で運転する車の窓を開けながら、「わー佐藤選手だ!」といった期待したリアクションを得るほどではなく「もう少し盛り上げて頂ければ」と控えめに笑った。パリ五輪で太もも裏を痛め、国内初戦として期待された11月の全日本選手権(愛知・安城市)は見送る方針だという。
 近代五種では、21年の東京五輪で馬への虐待行為があったとされ、これが世界中から非難を浴びて種目が消滅。28年ロサンゼルス五輪からはオブスタクル(障害物レース)が採用される。
 すでに千葉には試合で使う施設がありこれを屋内競技場として強化を始め、自衛隊でも年度内には施設を作る。ただ世界的にはすでに強化する国も多く、佐藤も「オブスタクルについては今後どうやって強化していくかが重要。例えば、外でやるとなると鉄製で夏は暑くトレーニングは困難。こういう面にもスポンサーが付いて下されば有難いのですが・・・」と、内田とともに協会のスポンサー探しを切望していた。
 この日、日本協会は佐藤に報奨金100万円を贈ることを決めた。JOC(日本オリンピック委員会)が銀メダルに報奨金200万円を出している点を踏まえ、金額については(教会が)できる精いっぱいの額が100万円だったという。佐藤と内田が撮影の際に協会のボードの前に立ったが、協会とJOCの名前だけが入ったもので、パリ五輪でメダルを獲得した競技団体、選手たちがスポンサー企業の名前が入ったボードの前で話す様子とは大きく異なっている。112年で初のメダルが、近代五種、特に日本ではなじみの深い障害物競走が加わる今、マーケティングという新しい分野にもつながるかどうか、協会のアイディアも重要になる。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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