スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年9月25日 (水)

女性スポーツの地位向上を求める国際組織「ウーマン スポーツ インターナショナル」がWEリーグの役員交代(女性三人が男性3人に交代)について「非常に憂慮している」と声明発表

25日、スポーツ界における女性の参画、活動を支援、発展させるために設立された団体「ウーマン・スポーツ・インターナショナル」(WSI、事務局米デラウエア州)が、女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」でこのほど髙田春奈チェアを含む役員3人が、野々村芳和Jリーグチェアマンが髙田氏の後任となるチェアに、宮本恒靖JFA会長が副チェアに交代した人事について「非常に憂慮しています。WEリーグが設立されたウーマンエンパワーメントの原則に反する」との声明をダイアン・ハフマン会長名で発表(公式サイト上)した。
 WEリーグはコロナ禍の2020年6月、JFA田嶋幸三・前会長のもと傘下の団体として発足。初代チェアに就任した岡島喜久子氏のもと設立され、女子プロスポーツの団体として「W=ウーマン、E=エンパワーメント」と、女子サッカー、スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する理念を掲げた。多様性など理念を浸透させる活動も行ってきた一方、プロリーグとしての根幹をなす入場者収入では当初の目標には及ばず、昨年の平均でも2000人程度と苦戦している。このため、クラブの中には開催するごとに赤字を背負うなど、各クラブの社長からもリーグの運営を不安視する声をあった。
 WSIは、日本のスポーツ庁が「目標値」と定めている競技団体の女性役員比率40%が、野々村氏以下新役員構成ではこれを下回る36%であり、加盟クラブにWE自身が求めている役員50%をも下回り、WEリーグ創設の理念である(スポーツ界における)女性の地位向上、女性リーダーの育成といった公約にも反し国際的な信頼を損なうとした。
 WSIは調査のうえ、WEリーグの資金的な問題が4年間続いた点は「理解し、変更の決定を妨げるつもりはない」と立場を明確にするが、男性が資金調達でより効果的なのかどうかの根拠は希薄で男性役員3人が女性役員3人に代わって財政が大幅に改善されるかどうかのデータもないと見解を示した。
 WEリーグの新体制はあす26日に発表される。男女協働のみならず、野々村、宮本両氏が「非常勤」である点もまだ説明はされていないため会見でどのような発信をするのか注目される。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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