スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年7月17日 (水)

パリ五輪へ出国ラッシュの毎日 石川祐希主将ら男子バレーの出国で見た落ち着きと洗練された振る舞いに人気の理由を知る

 パリ五輪に出場する選手たちのセレモニーが続き、空港に通う毎日だ。そもそも自分は「出発しない」のにもかかわらず毎日空港にいる、という状態はかなり笑える光景だ。例えば14日、13日に金沢で行われたサッカー女子日本代表の国際親善試合(対ガーナ、4-0)を取材していた記者たちは私も含めて金沢から最終便で帰京し、日付けが変わって帰宅。タッチ&ゴーで朝7時過ぎにはパートナーを務める「ANA」によるパリへの出発式を取材するため羽田空港に集合した。お互い「おはようございます」のあいさつを交わすものの、目がちゃんと開いていない様子に苦笑し合う。
 試合や練習を取材するのではない。
でも、出国前のわずかな時間、パリに行く選手がどんな様子で囲みの取材に応じ、五輪出発の定型文ともいえるあいさつをするのか、そんなルーティンにも改めて色々な情報が散りばめられていると教えられる。
 
 バレーボール男子日本代表(事前合宿地ポーランドへ)と「なでしこジャパン」(フランスの合宿地へ)の出発式では、男子バレーボールがこれだけの注目を集める理由がよく分かった。ファンからすれば何を今さら・・・だろう。
 ゲート横での式典では、主将・石川祐希(28=ペルージャ)が最初に「皆さんおはようございます」と切り出し「いよいよパリ五輪が始まる。みなさんの応援を力に変えて金メダルを持って帰ってきます」とあいさつ。石川が、こうしたセレモニー用のコメントの前に、朝早くからこのような盛大なセレモニーを開催してもらったことへの深い感謝も口にした。
 そしてセレモニーが終ると、ANA社員が寄せ書きした日の丸を、西田有志(24)ら選手たちが受け取った時と同じにお互いに端を持ち合って丁寧に小さく畳んだ。オリンピックという4年に一度の大舞台の特殊さ、価値、そして日頃応援してくれるファンだけではなく「人々の方を向こうとする」振る舞いは落ち着いていてとても洗練されていた。いつもの遠征、いつもの関係者とならば取り上げられることもない。だから緊張感もない。そうした立場を明確にできない
中で起きた「ズレ」を、ファンも何度か目撃しているはずだ。
 石川は「金メダルを持って帰る」と話した。でも「持って帰る」より前に、本当はいくつもの「メダル」実はもう存在していると彼らは示していたように思った。
 自分が「出発する」まであと何回空港に・・・。

[ 前のページ ] [ 次のページ ]

このページの先頭へ

スポーツを読み、語り、楽しむサイト THE STADIUM

増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

最新記事

カテゴリー

スペシャルインタビュー「ロンドンで咲く-なでしこたちの挑戦」