スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年5月12日 (日)

16年ぶりのJリーグ名門対決は劇的ドローで引き分けに 3-0のリードを守れなかった鹿島痛恨の後半と負けないヴェルディ

12日=県立カシマサッカースタジアム 第13節が各地で開催され好調の3位鹿島アントラーズと10位東京ヴェルディのJ116年ぶりの対戦は、0-3からアウェーの東京Vが追い付くという劇的な展開で3-3の引き分となった。セーフティと思われたリードを守れなかった鹿島は3連勝で止まり、東京Vは連勝は止まったものの10戦無敗(3勝7分)とJ1復帰の年、負けない粘り強さを見せている。
 試合は前半4分、鹿島の右CKに東京VのFW木村勇大がハンド(VARのオンフィールドレビュー)でPKに。キッカーを務めたFW鈴木優磨が決めて今季6得点目で先制すると、3分後には右サイドのMF師岡柊生の縦パスからMF名古新太郎がエリア右から左足でシュート。2点目を序盤で奪って試合を圧倒的優位に進めた。流れを変えたかった東京Vだったが、後半5分にも鹿島に先手を奪われてしまう。右CKから名古がクロスを送り、これにDF植田直通がヘディングで飛び込んで3-0と試合を決めたかに見えた。
 しかしこの後、城福監督自らイエローカードを受けるなど東京Vは闘争心を全面に出して反撃。チアゴアウベス、齋藤功佑と交代カードを切った。一方鹿島は交代カードを切ったが、両監督の交代のメッセージが試合の空気が一変させた。
24分には入ったばかりの齋藤が今季初ゴールで1点を返すと、さらに36分にも途中交代のMF翁長聖が左サイドからグラウンダーで送ったパスを木村がファーで捉えて3戦連続、今季6得点目で迫った。後半アディショナルタイム3分には、翁長がFKのチャンスに、DF谷口栄斗がゴール前へ頭で落とし、最後はFW見木友哉が右足で押し込んで3-3の同点となって試合は終了した。ヴェルディの粘りと、3-0で試合をものにできなかった鹿島の交代、詰めが対照的な16年ぶりの名門対決となった。

○・・・対戦前、11日来日した鹿島のクラブアドバイザー、ジーコ(71)と、Jリーグ発足当初からリーグをけん引するライバルチームとしてしのぎを削ってきた当時ヴェルディ川崎のOB・ラモス瑠偉(67)のレジェンド対談、「FREAKS~LEGENDS TALK~」が行われた。2人がリーグやクラブについて話すとみるみるヒートアップし、予定時間を大幅にオーバー。会場でともに対談を聞いたサポーターからも時に大きな拍手が湧くなど、プロがなかった日本のサッカーの実力だけではなく、時代を越えて人気や関心の定着にも尽くしてきた2人との時間を楽しんだ。16年ぶりの対戦について、ジーコが「昨日、ポポビッチ監督には、ヴェルディ戦は絶対に負けられない、と強く言っておいた」と言うと、隣のラモスもすぐさま「Jリーグを引っ張ってきたのはヴェルディと鹿島。ヴェルディのライバルは鹿島だと思っていた。一番良いパフォーマンスを見せれば・・・ヴェルディは負けない。引き分けでいいんじゃない?(ヴェルディの引き分けが多いことにかけて)」と、笑っていた。試合後、ラモスは「今のヴェルディ、本当に負けない。すごいね」と拍手していた。

 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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