東京マラソン日本人トップの西山「届かなかった41秒」・・・ペースメーカーの不安定さも高岡SDは「レースは生もの」と対応力を求める 2時間2分16秒でキプルト優勝、女子は2時間15分55秒ケべデがV 絶対王者キプチョゲ中盤の異変で10位
今夏のパリ五輪男子代表の最後の選考会となった東京マラソンは、22年オレゴン世界選手権代表の西山雄介(29=トヨタ自動車)が自己ベストの2時間6分31秒と、日本勢トップの9位となったが、パリ五輪出場設定記録(2時間5分50秒)を突破できず、昨年のMGCで3位だった大迫傑(ナイキ)が2大会連続五輪代表に内定した。
前世界記録保持者で、五輪2連覇のレジェンド、キプチョゲ(ケニア)、キプラガトら世界屈指の高速ランナーが揃ったレースは、スタートから15キロの通過は42分52秒、ハーフも1時間0分20秒と世界新を上回る超ハイペースで展開した。ただ、あまりの高速に3人いた先頭集団のペースメーカーは付いていけなかったのか、16キロ付近で1人が離脱、その後も1人がコースアウトし、26キロで最後の1人が棄権。設定された30キロまで行かずにペースメーカーが1人もいなくなった。
日本記録ペースを設定していた第2集団も、前日行われたミーティングで「1㌔2分57~58秒」の情報だったが、レース序盤で早くも1㌔3分まで落ちてしまったところも。西山は「前半遅く感じたので、ハーフ(中間点)を62分ぐらいで通過してほしかった。予想外ではあった」とレース後悔しそうに明かす。日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)も「(自分は)最後まで付いていくことができなかったが、設定タイムでは行って欲しいと思った」と、レース中の不安材料を口にした。
女子では新谷仁美が(2時間21分51秒で日本人トップの6位 )「あ、(通過タイムが遅すぎたと遠藤のコーチの指示で分かり)ヤバい、と」と表現するなどペースメーカーのばらつきに疑問の声が集まった。
一方日本陸連の高岡寿成SD(シニアディレクター)はこの件に関して「レースは生ものなので、想定した通りに進むことはない。その中でどう対応するか。ペースメーカーがダメだったから(レースの結果も)ダメだったとはならない」とコメントした。
ケニアでは日頃、整備された環境で練習している選手ばかりではなく、実際にオリンピックでも給水テーブルで水を取れず止まったり、一度取った(他のランナーの)ボトルの間違いに気が付き、別のテーブルに置いてしまったり、落としてしまったりといったアクシデントも多い。給水は「格闘技」と表現した選手もいる。ましてこの日は集団の人数も多かった。
マラソンで「世界と戦う」とは、スピード、順位だけではなく想像もつかないアクシデントとも同時に戦うものかもしれない。この日絶対王者と言われるキプチョゲが先日ケニアで交通事故死したケルビン・キプタム選手の世界記録を上回るペースで走りながら20キロ付近で突如に失速、苦しみながら2時間6分50秒の10位でゴールした姿が示すものは重かった。日本テレビの取材に「毎日がクリスマスではない」と答えていた。うまくいかない日(こと)がほとんどなのだ、それがマラソン、そういう意味だったのだろうか。


