「Jリーグ30年のプライドが、代表に元日の舞台を準備」 傷んだ芝の修復に芝用「布団」と光をあてて急ピッチで回復
国立競技場は23年12月だけでサッカー4試合、ラグビー1試合を行って元日を迎える。12月2日にJリーグ昇格プレーオフ(東京V対清水)、翌日は関東大学ラグビー早明戦、9日に天皇杯決勝で川崎対柏戦を開催している。その後も18日にはチャリティーマッチでウクライナのFCシャフタール・ドネツクと福岡アビスパが対戦。さらに28日にも高校サッカーが行われ、1カ月でサッカー、ラグビーで5試合と芝にとっての過密スケジュールが、初の元日代表戦にどう影響するかピッチの状態も心配された。
過密スケジュールだけではない。今年は10,11月と気温が下がらなかったために、夏芝と冬芝の「二毛作」という長年の成果を活かした独特のブレンドにも悪影響が及んだ。本来なら冬芝が成長するこの時期に夏芝が元気に残ってしまい、一気に寒くなった11月に夏芝が枯れても冬芝の成長が追い付かないアクシデントも抱えた。
いくつもの難問を乗り越えたのは、Jリーグの開幕式、オープニングマッチから始まった国立競技場の「ナショナルプライド」だ。
芝生のメンテナンスは外部専門企業に委託するが、細かな調整、感覚的な部分は国立競技場の事業課も担う。Jリーグの立ち上げの際に日本にはなかなか定着していなかった「スポーツターフ」の知識をかき集め、タネ会社、グランドキーパーと連携したマスターとも呼ばれた鈴木憲美さんの愛弟子・渡部雅隆さんに、代表の公式練習中久しぶりに会い話ができた。
万全の芝を初の元日代表戦に何としても準備するため、芝に養生シート、いってみれば芝専門の「お布団」をかけて、12台ものライトでピッチ全体の3分の2にあたる440㎡を照らしたという。これにより芝を休め、同時に生育を促進することができる。
渡部さんとは、鈴木さんがJリーグ開幕に向けて競技場内の小屋に寝泊まりしていた当時からの付き合いだ。
「国立競技場は屋根の構造上、全く日の当たらない場所もありますので光の当て方も工夫が必要になります。初の元日代表戦、もちろん天皇杯でも高校サッカーでも大切なピッチですが、代表の壮行試合の意味合いも込めて注目度も求められる芝も最高でなければいけませんから。大晦日の少しの雨も芝をよりいい状態にしてくれました。本当にほっとしています」
渡部さんと話しながら、「何歳になりましたか?」と聞いて、93年Jリーグ開幕年に入社したのだと教えられ「えー、30年の大ベテランに?じゃあ、50歳近くになった?」と、自分が〇歳になるのも棚にあげて驚いて笑いあった。
特別な布団をかけてもらい、特別にライトを当てられた芝が、24年のスタートを切る代表の舞台をどんなに輝かせてくれるか楽しみだ。


