スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2022年10月22日 (土)

30回の記念ルヴァン杯でオリジナル10の広島がロスタイム2点の大逆転劇で初優勝 C大阪は昨年に続き決勝で敗退、今季広島にも4敗 試合前には工藤選手へ観客、選手が黙とう

22日=国立競技場(観衆39608人) Jリーグのルヴァン杯決勝が行われ、昨年は名古屋に敗れたものの2年連続で決勝に進出を果たし雪辱を狙うC大阪と、30回目となる今年のルヴァン杯に、91年のナビスコカップ以来出場をしてきたオリジナル10として、初優勝を狙う広島が対戦し、痛恨のミスから先制された広島が、後半のロスタイムにPK、さらに56分にCKからゴールを奪う電工石火の鮮やかな逆転劇で初のカップを掲げた。
 前半はともにロングボールを蹴る展開となり互角のまま後半へ。立ち上がりの8分、C大阪のFW・加藤陸次樹が、広島の最終ライン左サイドから佐々木翔がGK大迫敬介に送ったバックパスを狙い通りに奪取。そのままシュート決められ、広島は手痛いミスから0-1と、前週の天皇杯決勝の甲府同様、先制を許してしまった。
 しかし前線の強いプレッシャーが効果を見せ、試合を押し気味に展開すると、34分、C大阪のDF、マテイ・ヨニッチがVARの結果ファールでレッドカードを受けて退場に。この時点で逃げ切りするしかないC大阪に対して、数的優位でたたみかけた。
後半9分とロスタイムが表示されたなか迎えた6分、C大阪のハンドをめぐってまたもVARが実施され、これによって広島にPKが与えられる。広島のFW・ピエロス・ソティリウが、GKの読みと逆の右隅に落ち着いてPKを沈め、土壇場で追いついた。前週の天皇杯では延長前半後半を戦った上でPK戦に突入しており、2週連続でPK戦かと思われたが、90+11分、CKを得た広島はピエロス ソティリウがまたも決めて、ロスタイムに2点という奇跡の逆転劇で広島が、3度目の決勝進出で悲願の初優勝を果たした。
 対するC大阪は2022年、広島と4度対戦しこれで全敗。しかも4敗のうち3戦は逆転負け(1-2)と異例の敗戦で苦手意識だけでは説明できない結果となった。
 試合前には、かつて広島でプレーをし、32歳の若さで21日に亡くなった工藤壮人選手(宮崎)の追悼式がピッチで行われ、スタジアム中が黙とうを捧げ、両チームの選手は喪章をまいてプレーをした。
 
 ミヒャエル スキッベ監督 ついに、やっと、サンフレッチェがカップを広島に持って帰ることができるということになり本当にうれしく思う。(ロスタイムのPKのシーンで)ピエロス ソティリウは経験値も豊富な選手で、これまでもたくさんのPKを決めている。彼ならしっかりと決めると思っていた。工藤選手の御逝去について、すごく若くして亡くなってしまったということは、すごく残念で、サンフレッチェとして、彼の家族、奥様とお子様に非常にお悔やみ申し上げます。
  小菊 昭雄監督  広島とは今季四度対戦して、選手の頑張りで一戦一戦、土俵際まで追い詰めることができ、選手の成長を強く感じる。今日のゲームプランも、選手たちは100%遂行してくれた。 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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