女子サッカーなでしこリーグ・中野真奈美(スぺランツァ大阪)が歴代1位の326試合出場を達成 遠藤保仁「リスペクト」と祝辞
10日、大阪堺のJ-グリーンで行われた「なでしこリーグ」、スぺランツァ大阪対世田谷スフィーダ戦(0-3で世田谷勝利)で大記録が誕生した。大阪のMF、中野真奈美(35)が、これまで山郷のぞみ氏(現・ちふれASエルフェン埼玉GKコーチ)が持っていたリーグ最多出場試合数325を抜いて、歴代1位となる326試合出場を記録した。ちょうど17年前の05年4月10日に18歳で「大原学園JaSRA女子サッカークラブ」でデビュー。以後、「岡山湯郷Belle」では宮間あや、福元美穂と11年のW杯優勝メンバーともプレー。「ベガルタ仙台レディース(現マイナビベガルタ仙台レディース)」、本田美登里監督が率いた「AC長野パルセイロ・レディース」、「ノジマステラ神奈川相模原」、昨年より「現・スペランツァ大阪」と、在籍した7クラブで(仙台では2クラブ)常にレギュラーに。男子に比較し圧倒的に試合数の少ない女子で、大けがや不調なく、常にピッチに立ち続けて到達した意義ある記録となった。
GKだった山郷氏が、14年に引退してから不滅とも思われた出場数が8年ぶりに更新され、試合後にはセレモニーも行われた。中野は、「終わるまで記録に対してそこまで意識していなかったのですが、終わってみてセレモニーをやっていただいたり、皆さんから声をかけて頂いたりして実感しました。大原学園からずっと応援してくださっているかたもいれば、大阪に来て知って頂いた方もいると思いますが、中野真奈美だけではなく、スペランツァ大阪、そして女子サッカーをこれからも盛り上げていけるように、自分自身も頑張りますので、皆さんも応援宜しくお願いいたします!」(なでしこリーグ発表)と、「らしい」コメントでさらなる出場を誓った。
この日、アウェーの湘南ベルマーレ戦(0-0のドロー)に先発し、Jリーグ最多の649試合出場を誇る遠藤保仁(42=磐田)も、ジュビロ広報の協力で温かいコメントを動画で中野に贈った。
「中野真奈美選手、リーグ通算最多出場記録、おめでとうございます。毎年コンディションを維持しながら積み上げられた326試合という素晴らしい記録は、リスペクトにあたります。これからもコンディションに気を付けながら、この記録を伸ばしていってほしいなと思います。これからも怪我無くリーグ戦を終えて、なおかつ良い活躍をしてくださると僕も嬉しいです。頑張ってください!」
遠藤からの「コンディションに気を付けながら・・・」は中野に重く響いたはずだ。決して、何も起きないわけではない。42歳の遠藤もきっとそうだろう。しかし何があったとしても、試合に出場し続けるためのクオリティを維持する精神力が、さり気ないコメントに凝縮されている。中野だけではなく、なでしこリーグ全体にとっても大きな励みだ。
中野は、長寿の秘訣は特にないと謙遜する。しかし、彼女をよく知る、こちらもタフな女性がアメリカからメッセージを寄せてくれた。今年1月、ウズベキスタンの女子代表監督に就任(23年12月まで)した本田美登里氏(57)は、長野パルセイロで監督を務めた時代に中野とともにチームを築いた。現在ウズベキスタン代表とアメリカでの親善試合に遠征中だ。
「記録を塗り替えたことはとても嬉しい」と我がことのように喜び、中野について「なでしこジャパンで通用する技術を持ち合わせながら、けが等でタイミングが悪かった」と、ポテンシャルを高く評価していたという。華やかなスポットライトを浴びる機会は少なかったかもしれない。しかし、そういう選手が大記録を樹立した価値を改めて称賛する。
「紆余曲折あっても、純粋にサッカーが好きだから、環境を気にせずに続けて来られたと察します。そんな彼女の思考を、若い選手たちに伝えたいですね」
米国からの本田監督からのメッセージにも、記録への敬意がにじんだ。
今季で34回を数えるなでしこリーグは、昨年誕生したプロ「WEリーグ」とは異なりアマチュアの最高位にある。かつて「なでしこ」と代表が命名された当時は、代表選手でもアルバイトを掛け持ちしているような状態だった。仕事している選手も、学生も、主婦も、周囲に支えられながらサッカーを続けるリーグで、17年かけて誕生した記録には、ただ数字の積み重ねだけではない、温もりがあるように感じる。
未来へ走るなでしこリーガー(なでしこリーグ公式サイトより)http://www.nadeshikoleague.jp/news/2022/0318_1229.html