スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年11月15日 (月)

敗れた水戸・秋葉監督が脱帽した、磐田の「大人のサッカー」・・・服部HCが試合中に見たその中身は

 3位につける長崎に勝ち点12差を付け、水戸戦には引き分け以上で昇格が決まるという圧倒的に優位な試合でも、療養中の鈴木監督に代わって指揮を執ってきた服部年宏HCは「まったくそういう気持ちにはなれなかった」と、試合を終えても緊張した表情を崩さなかった。「(周囲が)思っているような(あと勝ち点3といった楽な)気持ちじゃなくて、うちが連敗して、相手が連勝すると・・・と、厳しい展開ばかりを考えてしまった」と本音を吐露するほど、プレッシャーは大きかったようで、体重も数キロ減ったそうだ。
 昇格争いをするクラブがゲームによる疲労やケガに苦しむ真夏に、磐田は逆に強さを発揮した。8月9日の甲府戦からこの日の水戸戦までリーグ戦16試合中11勝5分け。負けなしの圧倒的な強さを、厳しい後半戦に向かうにつれて発揮した選手、チーム力について、敗れた水戸の秋葉監督は試合後、「本当に悔しいが、(磐田の)大人のサッカーをまざまざと見せつけられた」と、スコアだけではない、チームが備えた力を「大人のサッカー」と評して敬意を示した。
 服部HCによれば、「大人のサッカー」の中身を、例えば掛ける言葉ひとつでも実感するという。
 「(水戸戦で)ピッチに、相手を見ろ!と声を掛けただけで、選手が色々と考えながら、どう見たら、何が、どこに見えるのかを判断しているのが分かった。水戸のベンチから秋葉監督も、自分と同じに、相手(ジュビロの選手)をよく見て!と声をかけていたのが聞こえていました。その時、(ジュビロの)選手が見えているものは、目の前のプレーの先の先ではないか、と、ベンチで見ながら、選手が本当にしっかりやっていることに感心させられた」
 服部HCはこんな言い回しで、「大人のサッカー」を表現した。3年ぶりに復帰するJ1で、「大人のサッカー」が、かつての黄金時代を誇った磐田とはまた一味違う輝きを放つはずだ。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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