スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年8月27日 (金)

「たとえメダルを取れていてもバトンを渡す時・・・」五輪8強なでしこジャパン高倉麻子監督、今月で任期満了の退任

27日=オンライン 日本サッカー協会(JFA)は、東京五輪ベスト8だった「なでしこジャパン」(日本女子代表)を率いた高倉麻子監督(53)が、8月いっぱいで契約満了のため退任すると発表した。この日行われた女子委員会で決定し、今井純子女子委員長が「今月末をもって任期満了とさせて頂く」と発表。任期満了で更改しなかった理由、監督の指揮、五輪の評価などの女子委員会の見解は何も話されなかった。
 高倉監督はオンラインの会見で、「たとえメダルが取れていたとしても、五輪はひとつの区切りだと思っていた。何もネガティブなことは思っていない」と、5年間やり切った様子で挨拶した。
 東京五輪では、メダル獲得を狙いグループリーグを1勝(チリ)、1分(カナダ)、1敗(イギリス)で突破。トーナメントに入って4強をかけてスウェーデンと対戦するも敗れてベスト8だった。五輪後、少し体を休めたという監督は「たとえメダルが取れていたとしても、五輪はひとつの区切りだと思っていた。次にバトンを渡す時。何もネガティブなことは思っていない」と、やり切った表情で挨拶した。
 コロナ禍で1年延期となった五輪と、16年4月から就いた代表監督の任期が伸びるなか、欧州のように、コロナの感染状況に合わせて地理的にも国際試合を組みやすかった環境とは異なり、世界トップとの対外試合を組めないまま五輪に。「1年間強度の高い試合ができず、(本番で強豪国の)スピード、パワーを受けて立ってしまった」と、カナダ、イギリス、スウェーデンとフィジカルの強い国々との対戦に苦戦した理由を振り返った。2009年にU16代表コーチに就任して以来、20164月に史上初めて女性代表監督となり、18年にはアジア杯制覇、19年にはフランスW杯で今回と同じ8強で終わった。世界を制した監督(佐々木氏)の後任、しかも初の女性と、重圧のなかでもあえて大役を引き受けた当時を振り返り、「(当時)正直あまり考えると(責任の重大さに)引き受けられなくなるので考えずに飛び込んだ」と笑った。今後の去就については未定だが、「チャレンジする、転んでも起き上がる人間でいたい」と、また新たな挑戦のために充電する。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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