スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年4月 9日 (金)

全日本空手道連盟 植草歩が竹刀で負傷した事実認定し、強化委員長の香川氏を解任、理事も辞任 

9日=全日本空手道連盟(東京新宿区) 空手の東京オリンピック女子組手61㌔級代表の植草歩(28=JAL)が、1月に眼を負傷するなど、帝京大師範の香川政夫氏にパワーハラスメントを受けたと訴えている問題で、同連盟が理事会を開き、香川氏出席のもと、強化委員長解任と全空連理事辞任を決議した。倫理委員会は、香川氏が植草の目を竹刀でついたかどうか、双方の言い分を聞き確認したため「(その行為は)危険な行為にあたり、指導者にふさわしくない」とした処分理由を理事会にあげ、解任が決まった。香川氏は、5日の倫理委員会後、連盟あてに強化委員長と理事の辞職願いを自ら郵送で通達していたが、理事会は辞表を受理せず処分を下した形だ。
 詳細な説明が求められるブリーフィングに、全空連の笹川善弘五輪対策副本部長が臨んだものの、用意されたペーパー10行ほどを読み上げると、報道陣からの解任理由などを問われるたびに「それは理事会内での話なので」「倫理委員会の話は出せない」「コメントを差し控える」と珍回答を連発して退場。指導者にふさわしくない、と解任しながら、香川氏の資格停止処分は行わないといった矛盾点について説明を求めた報道陣が、笹川善弘氏の対応に困惑したまま会見場で説明を待つなど、植草と香川氏の問題以上に、笹川堯氏(85)を会長とする連盟のガバナンスの脆弱さを露わにした。
今回、植草が目を負傷したとされるのは、帝京大学内での稽古で、植草をはじめ五輪お強化指定を受けている選手たちが参加していたため、帝京大でも調査委員会を立ち上げ、大学内における同氏の処分についての調査が行われる。
 香川氏は、理事会後にカメラの前で対応し「私が故意に目をついたということは決してない。(植草とは)10数年一緒にやってきた師弟関係であり残念ですし、私の不徳の致すところです。心身ともに立派な選手になって是非金メダルを取って欲しい」と話した。植草も所属事務所を通じて「選手と指導者は立場が異なるので、考え方に違いが生じることは当然かもしれませんがその前提として、選手と指導者がお互いを尊重しあえる風通しのいい環境がスポーツには必要だと思います。今回の結果がその一歩となることを強く望んでいます」とコメントを発表した。
 理事会冒頭では笹川会長が、香川氏が竹刀を用いて暴力を伴う指導を行ったことについて、全日本剣道連盟に謝罪したと明かした。「先日、謝罪文をお届けし、後日私が直接参じて謝罪を申し上げた。竹刀は剣道の道具であり、同じ武道団体であってはならないことと考えている」と語った。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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