スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年2月22日 (月)

Jリーグ 大分、浦和サポーターの「コロナ対策ガイドライン」違反に対し、けん責と罰金でクラブを処分 

22日=オンライン Jリーグは臨時実行委員会を開き、昨年10月31日に昭和電工ドーム大分で開催されたJ1リーグ第25節大分トリニータ対浦和レッズで、両チームのサポーターが新型コロナウイルス感染対策のための「ガイドライン」に違反したとして、両クラブに対して懲罰を決定した。アウェーの浦和にはけん責と罰金300万円、大分にけん責が科せられた。当時、アウェーの観戦が再開された最初の試合だった。 
浦和サポーター約40人は、試合開始前の午後2時頃から終了する午後4時頃まで、全席指定席だったにもかかわらずガイドラインに反する席の移動をし、スタジアム上段で立ち見での応援をしながら、同じくガイドラインに違反する指笛を鳴らしていた。また、サポーターの1人はフェンスに上り、フェンスの外に向かってペットボトルのようなものを投げたという。
ホームの大分サポーターは、浦和サポーターが座席を移動して、太鼓に合わせて立ち見で手拍子をしていたことに対して抗議する形で、10人程度でゴール裏の浦和サポーターに集団で突入、密となる行為があった。村井チェアマンは「ビジタークラブはホームクラブのルールを前日までに確認、合意し、これを順守することを改めて確認した」とし、浦和サポーターがそれ以外の違反行為で改善要請をされながらも繰り返した点を問題視する。
Jリーグは、コロナ対策を巡るガイドラインの策定に伴い、同時に規約にも違反行為を罰する項目を加えた規約の改定を行ったが、これは、違反への対応が十分取られていなかった場合に「クラブに」科すもので、個人を直接、懲罰の対象とするものではない。同じく浦和の沖縄キャンプ中、柏木陽介が規律違反をした件でクラブが退団を発表しており、すでに重い罰則を選手に科した浦和に対しての処分は行わない。
村井チェアマンは「(一部)サポーターによる、冒とく、といっていいほどの行為がまた起きるとなれば、クラブ側は退場を命じ、試合には関与させないといった対応をすることになるだろう」と、開幕を前に、コロナ対策への協力を呼び掛けた。今後、各クラブが、違反したサポーターの団体、サポーター名の公表を検討する可能性もあるという。
 シーズン開幕を前に、コロナ対策のガイドラインに反する行為に警戒を強める理由は、「誤解を招いている」点にあると、オンライン会見中に、Jリーグ木村専務理事が明かした。
「実は、サッカーでは今も大声を出して応援していると思われている。実はこれが大きな問題」と明らかに
。サッカーならでは大きな声での応援や、指笛といった観戦スタイルが、コロナ禍の今も行われていると誤解され、それが観戦を遠ざけている遠因ではと分析する。これは、昨年、Jリーグがデジタルチケット販売で得たアンケート情報から、一昨年観戦したファンに、昨年の(コロナ禍での)試合に来なかった理由をたずねたところ、相当数で「Jリーグの応援スタイルが(飛沫の拡散や密集といった)コロナの感染予防になっていない」などの回答が寄せられたという。

ガイドラインにも明記されている声を出さない応援、手拍子での激励はすでに定着し、クラスターなども起きていない。感染予防対策は十分に取った上で、さらに科学的な知見を加えての安心、安全な観戦ができるスタジアム作りと同時に、それを強く発信する体制が2年目のシーズンに重要な課題となりそうだ。

 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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