スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2020年9月 3日 (木)

横浜FC対鹿島の決勝点は「ハンドとすべき」JFA審判委員会がブリーフィングで明らかに

3日=オンライン会見 日本サッカー協会(JFA)は報道陣向けのレフェリーブリーフィングを開き、J1第11節の横浜FC対鹿島アントラーズ戦(8月19日)前半25分の横浜FCの先制ゴール(このゴールが決勝点)の際に起きた、横浜FCのFW・一美和成のハンドについて、元主審で現JFA審判委員会トップレフェリーグループマネジャーの扇谷健司氏が「ハンドとすべきだと考えている」と見解を示し、決勝点は認められるべきではなかったとの考えを明かした。 
 得点シーンは、鹿島DF町田浩樹がブロックしたボールが一美の手を直撃。こぼれたボールをMF松尾佑介がつなぎ、最後はFW皆川佑介が押し込んで、結果的に横浜FCが決勝ゴールを奪って勝利した。鹿島サイドは、一美のハンドを主張し、上田益也主審に抗議したものの判定はハンドを適用せずゴールとされた。
 審判でもこうした食い違いが起きる理由は、「ハンド」の度重なるルール改正にある。6月から国内外で適用される「20、21年版ルール」では、たとえ偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に「触れた直後に」①相手競技者のゴールに得点する②得点の機会を作り出す、のを反則に。ところが「触れた直後」が、一体何秒後なのか、どのくらいの距離なら「後」なのか、明確に限定されておらず、この解釈問題が一層の混乱を招いた最大の要因となった。扇谷氏は会見で「(一美のハンドの後)2人のプレーヤーがボールに触れた。移動したのは5mほど。約4秒の間に5m移動して、ハンドの後に得点が生まれた」とVTR検証の状況を説明。そのうえで「ゴール前でこのようなことが起き、短い距離の中でゴールが入ったと考えると、ハンドと考えないのは難しい。ゴールに近いところで手に当たったものが得点になってしまうのは、サッカーでは受け入れにくいと思う」と、ハンドと結論付けた。今回の見解が、今後のハンド判定にひとつの指標となる。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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