Jリーグ 大宮対福岡戦 福岡の選手に陽性の疑いで90分前に急きょ試合中止 濃厚接触者特定する時間がなくJリーグが判断
2日=オンライン会見 Jリーグは、第9節の大宮アルディージャ対アビスパ福岡戦(NACK5スタジアム)で、福岡の選手1人が「PCR検査で新型コロナウイルス陽性の可能性が非常に高い」と判断されたのを理由に、試合直前の午後5時急きょ中止とした。Jリーグが2週に1度定期的に3000人規模で行ってきたPCR検査は、スクリーニング(無症状者への検査)のため、手続きでは、医師の診断を受けたうえで陽性かどうか確定し、その後当該保健所への連絡を行う。もし陽性の場合、このカードの試合開催前までに濃厚接触者の特定が間に合わないため、リーグとして中止を決断したもの。7月26日の広島対名古屋戦で、名古屋の陽性者の濃厚接触者を特定できなかったために急きょ中止したのに続き2例目となる。
大宮の森正志代表取締役社長はオンライン会見で、すでにサポーターが集まる状態のなか「即座に入場を止めて中止を発表し、安全にファン・サポーターにお帰りいただいた」と対応したという。また福岡の川森敬史代表取締役社長は、陽性が疑われる選手は、試合前検温でも体温36.2度で自覚症状はなく、(Jリーグが選手たちに推奨する)行動履歴アプリで確認したところ、「自治体から注意を促されている(大勢での会食など)行動はなかった」とした。
Jリーグが選手・コーチングスタッフ・審判員ら全員を対象に行っているPCR検査は2週間に一度の金曜日に検体採取を行い、火曜日に結果が判明、水曜日に発表するルール。5日発表分で4回目となる。それを日曜日の発表に大きく前倒しした理由は、1日、U-19日本代表候補合宿のため集合した選手1名(町田ゼルビアFC)から陽性反応が確認されたからだった。2日午後、同クラブは、FW・晴山岬が陽性だったと発表しており、前日の時点でJリーグ側もこの件をサッカー協会から伝達され、Jリーグの検査センターに対し、「極めて異例の対応として早く行ってもらった」(村井チェアマン)という。
町田は1日から濃厚接触者の特定を始め、晴山は2日アウェーで行われた京都戦メンバーには入っていないことが確認でき、京都対町田戦は予定どおりに試合を開催した。同じJ2リーグに所属する福岡の結果もこうした超特急の検査で明らかになったもので、実際に検査センターから報告が入ったのはキックオフ2時間前。広島対名古屋戦と同様、濃厚接触の懸念を見込んでの中止決定だった。
Jリーグはスポーツ団体、また企業を含めても異例の大体的、組織的なPCR検査を実施しており、専門家の助言も常に受けている。今回続いた例は、検査の「隙間」で判明する格好で、対策をこれだけ打ったなかでの課題は悩ましいところだ。くしくもサッカーでも福岡、名古屋、東京といった都市圏で出ている点も特徴的で、「アスリートにもそうした状況が反映されている。改めてその脅威を感じる」と、村井チェアマンも驚く。
1日に行われた鳥栖戦後、FC東京の長谷川健太監督がオンライン会見で「鳥栖の選手が発熱していたと試合前に聞かされた」と、不安を露わにしたが、Jリーグ側は発熱した選手の「陰性」の検査結果を確認したうえで、クラブ側にも伝達し試合開催をしていた。長谷川監督が発熱でも不安に感じるのは、当然の危機感だ。チェアマンは「安全の担保に、試合前に全員検査をするならば、60人程度で済む。そういう方法で不安を払拭する努力をしたい」と、さらに踏み込んで、1日にU-19日本代表合宿前にJFA(日本サッカー協会)が採用した「SmartAmp法」など、1時間ほどで結果が判明する検査式導入など、検討すると明言した。
米メジャーリーグは、選手の感染が増加しているため、シーズン打ち切りも検討されている。NPB、Jリーグとも政府の指針にならって、8月一杯は5000人収容で試合を続ける予定だが、厳格なガイドラインというお守りと、個人の感染予防意識で今回の第2波を乗り越えられるか、今後も多くの課題が浮かびあがってくるはずで、状況に合わせたフレキシブルな対応力が求められそうだ。