スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2019年8月 9日 (金)

女子ヨット470級の吉田・吉岡組 東京五輪内定 身長16センチ、年齢10歳、ヨットのキャリアも10年、「格差」コンビが示すスポーツの楽しみ

セーリングの470級(ヨンナナマル級)世界選手権最終レースが9日、神奈川・江の島ヨットハーバー)で行われ、前回優勝の吉田愛(38)・吉岡美帆組(28=ともにベネッセ)が総合2位で銀メダルを獲得し、メダル獲得者で日本最高位に内定が与えられる条件を満たし、ヨットではトップバッターで2020東京五輪代表に決まった。身長177㌢のクルー吉岡と、身長161㌢のスキッパー、吉田のコンビは、前回リオデジャネイロ五輪に続くコンビでの出場(吉田は4大会連続出場)となり、メダルに届かなかったリオ5位の雪辱を期して東京での金メダルを狙う。女性のアスリートキャリア、またライフバランスの充実ぶりを示すコンビでもある。
 2人は、年齢10歳差、身長16センチ差、ヨットのキャリアも江の島を本拠地に6歳からヨットに乗っていた女子ヨット界のレジェンドともいえる吉田と、高校から始めて目立って成績も収められる大学で引退するつもりだった吉岡と、面白いほど対照的なコンビである。12年ロンドン五輪後の公開試技会で、長身ながら、ヨットでは重要な船の上でのバランス感覚を見初めた吉田がスカウト。「雲の上の人だった」と憧れた吉田の厳しい指導に、国際試合の経験を持たなかった吉岡が食らいつく格好でリオまでたどりついたものの、初五輪のプレッシャーに吉岡がのまれ、初日のレースでまさかの落水をしてしまった。そこから10歳差のコンビは再び異なる道を別々に歩んで、17年に再結成する。
 リオを最後に考えていた吉田だが、江の島で行われる東京を目指して17年に長男を出産、日本の女子トップ選手ではあまり例のない一線への復帰を目指してトレーニングを続けるなど新たな道を模索した。一方吉岡は、吉田の産休中にベネッセで社員として仕事をこなしながら、英語を学び、違うコーチ、コンビを組んで技術を磨いた。17年9月にコンビが復活すると、昨年には世界選手権で日本の女子として初めて優勝し、この日の内定第一号につなげた。「4年前にできなかったセーリングを見せたい」と、2人で4年の間に積んだ新しく、深いキャリアを吉田は持ち味につなげると笑顔を見せる。
 そういえば、全ての競技での東京五輪内定第一号は、男子シンクロ板飛び込みの寺内健(38)と坂井丞(さかい・しょう、26)のコンビだ。2人も、今回で6度目の五輪出場となるレジェンド・寺内に憧れて競技に打ち込んだ12歳下の坂井に対し、寺内は、北京五輪後一度は引退。12歳の年齢だけではなく、コンビは様々な「差」をハーモニーに変えて五輪を目指している。女子ヨット、飛び込みの2組の活躍は、日本のスポーツ界だけでなく、仕事の現場や働くチーム力にも好影響をもたらすはずだ。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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