スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年8月10日 (土)

パリ五輪大会フィナーレ女子マラソンの日本代表・前田穂南 骨折が判明しレース前日に欠場発表 女子マラソンが2人で臨むのは08年北京五輪5日前に野口みずきさんがケガで欠場して以来

10日(日本陸連発表) 日本陸連は、あす11日、パリ五輪のフィナーレで行われる女子マラソンの日本代表、2時間18分59秒の日本記録保持者、前田穂南(天満屋)が11日のレースを欠場すると発表した。右大腿骨疲労骨折が判明したため。
 前田は7月31日に米国の高地・メキシコ州アルバカーキでの練習中に右大腿部付け根付近に張りを感じたが、8月上旬、米国から直接パリに入ってから日本陸連のドクターらのサポートのもと本番に向けて調整を行ってきた。レントゲンやエコー検査などを実施した際にはケガは見つからなかったが、レースを前に痛みなどの症状が改善されないため、9日にパリでMRI検査を行ったところ「右大腿骨疲労骨折」と判明した。出場していれば五輪2大会連続で12回目のマラソンだった。
 女子マラソンの補欠は8月2日に解除をしており、補欠の細田あい(エディオン)との入れ替えはない。日本陸連は2日の時点で「正選手が調整段階に入ることでけがのリスクがほとんどなくなったこと、補欠選手(細田)の精神的ダメージ(長く調整を続ける点)を配慮し、日本陸連が独自で設定した補欠解除日となった」と説明していた。 レースには一東京五輪8位入賞の一山麻緒(資生堂)、初出場の鈴木優花(第一生命グループ)で臨む。

 パリのコースは五輪史上最難とも言われるほど起伏が激しく、日本陸連と所属する天満屋が話し合い、「タフなコースで無理をすると、最悪の場合、手術が必要になる」と、28歳の日本記録保持者の健康を最優先に判断したという。「チーム、コーチ、選手と話し合い、この状態でマラソンに出場することは今後の選手生命にも関わる重大な問題であるため、本連盟として欠場を判断いたしました」(日本陸連)と説明した。前田は今年1月の大阪国際女子マラソンで19年ぶりに日本記録を更新。28歳とまだまだ一線で走る時間は長く、国際大会出場のチャンスも多くあるため将来を考慮した決断となった。

 08年北京五輪ではディフェンディングチャンピオンの野口みずきさんが2連覇を狙っていたが、スイスでの合宿中に左太ももの裏を肉離れし、日本で検査の結果、オリンピック5日前に欠場を決断。当時土佐礼子さん(途中棄権)、天満屋の中村友梨香さん(13位)が出場しており今回はそれ以来の2人でのレースとなる。
 オリンピックの女子マラソンで日本勢の出場が2人だったのは、84年に初めて実施されたロサンゼルス五輪のみで(代表が佐々木七恵さんと増田明美さん)以降は3人のフルエントリーを続けてきた。
 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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