パリ五輪なでしこジャパン藤野あおばがマンチェスター・シティー移籍「ベンチに座るつもりはみじんもない」クラブに「置き土産」という価値と意義を模索したベレーザの交渉
17日=多摩市陸上競技場 サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」でパリ五輪に出場した藤野あおば(20)が、日テレ東京Vからイングランド女子スーパーリーグの「マンチェスター・シティー」に移籍するため取材に対応し、同クラブを目指した経緯などを自ら説明した。この日はノジマ相模原とのトレーニングマッチで出場はできなかったが(すでに契約内のため)、これまで共にプレーをしたチームメートに新たな刺激を受けて近くキャンプ先の豪州・パースに出発する。
初の海外移籍先がビッグクラブの点を「最初の移籍にしては挑戦的で、競争も激しい大きなクラブ。選択肢はいくつかあった。でも、入る前からベンチに座るつもりはみじんもない。自分の努力次第でプレー機会はどうにでもなる。自分の良さを出したい」と、強い気持ちを示した。昨年のW杯で実感した「スピード感」「相手との距離感」「フィジカルの強度」この3点を一層磨く必要があると移籍を決断した。
パリ五輪初戦のスペイン戦ではコース、スピードとも完璧なFKで先制点を奪ったものの逆転負けを喫し、その後右足母趾(ぼし)を痛めて2試合目のブラジル戦、3試合目のナイジェリア戦の欠場を余儀なくされるなど、昨年のW杯に続く国際的な大舞台で力を出し切れなかった無念さは残っているという。
27年の女子W杯ブラジル大会で23歳、28年ロサンゼルス五輪は24歳、そしてJFA(日本サッカー協会)が目指す2031年女子W杯の日本招致が実現した時は27歳と、今後訪れるビッグイベントと藤野が円熟味を増すキャリアが長く重なる。なでしこでの在籍年数と合わせ、澤穂希さんがかつて日本の女子サッカーの隆盛とともに自身のキャリアを磨き重ねたように「大黒柱」としての成長に期待が集まる。
「海外の新しい環境で、自分ができることをより増やせるように積み重ねて、自信を持ってW杯は優勝、オリンピックはメダル獲得と、3年後、4年後の大会を迎えられるようにしたい」と笑顔を見せた。
「移籍金という置き土産をクラブに。女子選手として新しい形を模索したベレーザ」
今回の藤野の移籍には過去の女子選手とは少し違う意義と価値がある。これまで女子選手の移籍では移籍金が派生しない点を前提とし、送り出すクラブ側に契約期間が残っていても本人の意志を第一に尊重してきた。このため選手と代理人と獲得するクラブ間での話し合いで契約が結ばれるのが通例だった。
藤野に関しては海外の複数のクラブからすでに一昨年、ベレーザに対して直接オファーが届いていた。このためクラブが主導権を持った中で交渉が進められ、中には相手クラブのオーナーが直々に東京・稲城市のクラブハウスを訪ね、かつてない金額での移籍を申し出たケースもあったようだ。
藤野のベレーザでの契約は来年まで残っており、今回の交渉のポイントはベレーザ側にも「移籍金」が支払われる点だ。クラブ側は金の額、交渉の詳細は明かしていないが、女子選手の新たな移籍の形として交渉の先べんをつけたといえる。