スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年6月29日 (土)

陸上日本選手権 超ハイレベルな100,110㍍ハードルで村竹、福部が五輪標準記録突破し決勝へ 走り幅跳び・橋岡優輝は優勝で五輪内定 日本選手権4日間で3種目5レースに臨む田中は5000㍍に優勝し、30日に最後の800㍍へ

29日=新潟・デンカビッグスワンスタジアム パリ五輪選考会を兼ねた陸上の日本選手権第3日目が行われ、女子100㍍障害準決勝では、日本記録保持者の福部真子(28=日本建設工業)が12秒75(追い風0・8㍍)をマークし、パリ五輪の参加標準記録12秒77を突破。1組1着で30日の決勝に進出した。2組では、田中佑美(26=富士通)が12秒85(向かい風0・3㍍)で1着、寺田明日香(34=ジャパンクリエイト)が12秒98の2着でともに決勝進出を果たした。
 ここ数年、12秒台を舞台とする激戦が展開する同種目だけに、予選から福部、田中が大会記録を更新。ここに怪我で戦線離脱をしていた寺田が加わり、決勝では12秒73の日本記録更新を視野にしたにハイレベルなレースがそのままパリにつながりそうだ。
 待望の五輪標準記録を突破して決勝に臨む福部は昨年、ブタペスト世界陸上の参加標準記録を突破して臨んだ日本選手権で上位3位に入れず泣いた。「去年のあの瞬間を忘れたことは一瞬もない。でもあれがあったからこそここまで踏ん張れた」と、メンタルの成長に手応えを見せる。「あの出来事があって良かったとやっと自分に言える」と、ライバルたちの決勝レースを笑顔で待ち望んでいる。
 男子110㍍障害では、日本記録保持者(13秒04,泉谷駿介と)村竹ラシッド(22=JAL)が準決勝1組で13秒14をマークして五輪標準記録の13秒27をここまで重ねて突破。この日は向かい風1㍍という悪条件でも五輪標準記録をサラリと突破する圧倒的な力に「五輪標準記録もあまりにサラッと、しかも何度も突破してしまうので、準決勝のタイムも普通に見えてしまう」と記者から聞かれると、「僕もなんです」と笑い、もはや照準はパリ五輪出場ではないとの強さを印象付けた。日本選手権で優勝すれば即時五輪内定となる。ラシッドは21年の日本選手権で失格に泣き、22年オレゴン世界陸上に出場したがハードルに当たる不運で予選落ち。昨年の日本選手権は怪我で欠場するなど慎重に、大胆に決勝を捉える。村竹は「思った以上の出応えだった。決勝では(準決勝までの課題を)修正して(夢の大台と言われる)12秒台が出せるか楽しみに決勝を待ちたい」と気持ちを引き締めた。
 すでに8㍍27の五輪標準記録を突破し(8㍍28)優勝すれば内定する男子走り幅跳びの橋岡優輝(25=富士通)は7㍍95で6回目の優勝と、2大会連続五輪出場を決めた。東京五輪では6位に入賞している。この日は2回目に優勝記録となる7㍍95(追い風2・4)をマークしたがその後8メートル超えはできず、「まったく走っていない。(悪いところは)全部です」と納得のいかない様子だった。5月以降、イタリアを拠点にして転戦しておりコンディショニングも難しい状況だったようだ。
 日本選手権4日間で1500㍍2レース、800㍍2レース、5000㍍と5レースを走る鉄人的ハードスケジュールでパリ五輪を目指す田中希実(24=ニューバランス)は、800㍍の予選から2時間で5000㍍に出場。15分23秒72で3連覇を果たし今大会で手中にした1500㍍代表内定とすでに代表に内定している5000㍍との2冠を飾った。最終日には800㍍に出場する。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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