スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年5月10日 (金)

女子アジアクラブ選手権 三菱重工浦和が4分の逆転劇でアジアクラブ女王に MF清家貴子が7得点で大会得点王に輝く

10日=浦和駒場 決勝開催が中止、さらに開催と二転三転した女子アジアクラブ選手権決勝が行われ、三菱重工浦和レッズレディースが、今大会7得点で得点王となったMF・清家貴子(27)の同点ゴールなどで2-1で仁川現代製鉄レッドエンジェルスを下し、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)を3度制覇した男子に続いて女子も浦和がアジアクラブの頂点に立った。来季(今年10月開始予定)から女子アジアチャンピオンズリーグとして新設される大会の準備大会として行われたが、決勝を前にした3月、AFC側から突如中止の通知が入り一時中止に。男子ACLとの同時開催や広告収入の問題があったとされる一方、日本サッカー協会、韓国サッカー協会、WEリーグ、ACLの経験を持つ浦和レッズが水面下で大会を何とか成立させるために大奮闘。駒場を確保し平日の1800キックオフ、チケット販売の準備時間も少ないといった難しい条件のなか浦和駒場には5271人の観客が詰めかけ、レッズレディースの優勝を見届けた。
 試合は、5バック気味と浦和の攻撃を警戒して入った仁川現代製鉄が13分、DFラインで長嶋玲奈(25)が相手のプレッシャーにボールをこぼすミスをしたところ、それを拾ったMFイ・ソヒのミドルシュートで先制。韓国女子リーグ戦でも今季負けなし、リーグ連覇中の強豪チームに先制点をホームで奪われる展開となった。
しかしこれで冷静さを取り戻したのか、22分には、WEリーグで10試合連続ゴールをあげ、今大会でも6点を奪う絶好調の清家がMF栗島朱里(29)の浮き球パスを難しい角度から右足でネット上を狙った。エースの今大会7得点目で追いつくと直後の26分には、右CKからFW島田芽依(22)がニアに飛び込みヘッディング。わずか4分間での鮮やかな逆転で優勝を手繰り寄せた。
後半からはケガから復帰したばかりのDF高橋はな(24)を最終ラインに投入。高橋&石川璃音(20)と「なでしこジャパン」でも最終ラインを守るDF2人の久々のそろい踏みを中心に固く守り切った。

 清家は試合後、2-1でリードしていた場面で、今年の皇后杯でINAC神戸に追い付かれ最後はPK戦で敗れた悔しい試合展開が「頭をよぎった」と明かし、「ここで引き締めなくてはと思ったがみんなも同じ気持ちで、ここからだよ!と言葉がでていた。日頃一緒にプレーしている仲間と優勝したのは嬉しい。レッズレディースの良さをたくさんの方々に知ってもらいたかった」と、アジアの頂点に立った喜びを噛みしめた。

 後半DFで入った高橋は、「とにかく集中してゲームにはいることだけを考えた。守り切れたのは全員の力。その中でも璃音と組んでできたのは本当に楽しかったし、ひさびさ感がなかった。(サポーターのレッズコールに)リーグ戦ではなかなか聞けない。まるで自分が応援にいった(レッズの)試合のようで(感激して)たまらなかった」と笑顔を見せていた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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