スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年4月14日 (日)

WEリーグで浦和のFW清家貴子が8試合連続得点で大記録更新「自分でもすごいなぁと。もうできないと思うので伸ばせるまで伸ばします」とユーモア交えてコメント 得点ランキングも13点で首位独走 その秘密は・・・

14日=浦和駒場スタジアム WEリーグ第14節が各地で行われ、首位の三菱重工浦和レッズレディースがノジマステラ神奈川相模原を2-0で下して勝ち点を38まで伸ばして首位を固めた。浦和のFW・清家貴子(せいけ・きこ、27)は、1-0で迎えた(前半27分塩越柚歩のゴール)後半15分、塩越の右CKに混戦ながら正確に頭でボールを捉えてヘディングで2点目を決め、これで自身が更新中の連続試合ゴールをさらに8まで伸ばした。得点王ランキングでも2位の上野真実(広島)の7点を大きく引き離す13点で独走する。
 清家は先週、女子日本代表「なでしこジャパン」のアメリカ遠征(シービリーブスカップ)に参加し、アメリカと対戦した初戦では開始30秒にもゴールを決めており、この日は遠征の疲れや疲労も全く感じさせず先発として83分間プレー。海外遠征を挟んでも揺るがないコンディションの良さを
うかがわせた。
 試合後の取材で「自分でもすごいなぁという気持ち。もう(連続試合ゴールは)できないと思うので伸ばしておけるところまで伸ばしたい」と、ユーモアたっぷりに喜びを表現した。連続試合のスタートは3月3日の神戸戦でここからこの日のノジマ戦まで8試合、FWとしての充実感は自らのゴール数だけではなく勝利という結果(1分で負けなし)に結びついている点にもあるのだろう。
 実は起点となった3月3日の神戸戦が「ある転機」だった、と明かす。
 1月に行われた24年皇后杯決勝、浦和は先制しながら神戸に後半追いつかれ延長戦、さらにPK戦ともつれた結果振り切られてしまった。ストライカーとしてこの試合の悔しさや怒りを消化できないまま再び神戸との試合に臨む前、ネガティブにも思えた怒りがむしろスイッチとなり、余計な考えが消え集中できるのを実感したという。試合は引き分けたが1点の内容には手応えがあった。
 「メンタルが穏やかに試合に臨めているというか、(この8試合のゴールの間)怒りをスイッチにすると自分にはいいのかもしれない。集中して臨めていると思います」と、感情をこれまで以上にうまくコントロールできているのを要因とした。 
 Jリーグでは、連続得点試合数のランキングでJ3での9試合(岸田和人=当時山口、15年5月~7月)が最多で、J1最多記録の8試合連続は、当時横浜Mのサリナス(スペイン、97年9月~98年3月)でいまだに破られておらず、サリナスに続くJ1での連続7試合には森島寛晃(C大阪、98年3月~4月)、磐田での高原直泰(02年7月~同8月)、鹿島のマルキーニョス(ブラジル、08年8月~同10月)ら名だたるストライカー7人が達成したのみ。
プロ選手として8試合を達成した清家の記録の偉大さを示す。
 パリ五輪イヤー、WEリーグの大記録がなでしこのメダルチャレンジにも好影響を与えるに違いない。

 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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