スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年2月27日 (火)

なでしこジャパン パリ五輪出場をかけ北朝鮮と運命の決戦へ 前売りは北朝鮮が’先制’「ホームでやるような温かい気持ち」リ・ユイル監督 池田監督は「皆さんの力でパリの出場権を取りたい」と’逆転’を呼びかけ

27日=国立競技場 27日パリ五輪の出場権をかけたアジア最終予選第2戦目を前に「なでしこジャパン」と北朝鮮ともに公式練習と会見に臨み、池田太監督は「(ジッダでの初戦から)大きなケガなく全員が戦えるなか、自分で(選手を起用に)セレクトできる状態にはある。(北朝鮮の)DFが4枚か5枚か、それにどう対応するかは共有している。また、ここまでの国際親善試合で(積み上げた)対応力、修正力は我々の強み」と、24日の初戦(スコアレスドロー)から中3日の決戦に向けて強い高揚感を示した。
 この試合に勝てば20年東京五輪(開催国枠)に続くオリンピック2大会連続6度目の出場となる。アジア最終予選を勝ち抜いて出場権を獲得するのは12年ロンドン五輪以来(11年中国で獲得)と12年ぶり。90分でも決着が付かなかった場合、延長30分、そこでも決まらない場合はPK戦まで死闘が繰り広げられる。
 一方北朝鮮も練習と、リ・ユイル監督の会見を行い、北朝鮮のゴール裏が完売している(3000枚)勢いに触れ、「あすは3000名(が応援に来る)と聞いている。皆さんの応援で、アウェーではなく、まるでホームでやるような温かい気持ちになっている。それに応えたい」と話した。このプレーオフへの準備に、中国の南の地方で3週間トレーニングを行ってきた。
 監督は初戦を終えてなでしこで特に印象に残った選手について、「サッカーの専門家として、長谷川(唯)選手の能力には素晴らしいものがあると思う」とコメントした。こうした個別の選手へのコメントはとても珍しいが、監督は、1966年W杯イングランド大会で北朝鮮がイタリアを破ってベスト8に進出した際GKだったリ・チャンミョン氏の子息で、「サッカーの専門家」と発した言葉に歴史と背景が少し伺えた。

 27日17時で、日本のゴール裏は2000枚、ほかの席が16000枚販売。北朝鮮の応援に押されているが、当日券は窓口での販売はしない代わり、ネット販売でキックオフの18時30分直前まで購入が可能な形にし、平日、会社帰りのサラリーマンらにも足を運んでもらえるように対応する。
 池田監督は「多くのサポーターが(なでしこの)背中を押してくれると思う。皆さんの力を借りながらパリの出場権を取りたいと思う」と、日本のホームの利を活かすためにもファンには一人でも多く足を運んで欲しいと会見でも訴えた。
 サウジアラビアのジッダでは、30ミリを超えた長い芝に苦戦したが、国立競技場では当日、芝を22ミリと、ボ―ルがより走りやすくスピーディーな展開の「なでしこ仕様」に長さを揃えるという。
 5バックなど、日本側の想定外のシステムで第1戦を引き分けにした北朝鮮が五輪切符をかけた試合でどう試合に入るかも注目される。公式練習は冒頭の20分でクローズされたが、練習中に「北朝鮮のリクエストで」ピッチに散水されたのが意外に見えた。持ち味であるロングボールでパワーをかける。そう予想されるだけではないかもしれない。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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