スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年2月20日 (火)

パリ五輪出場権を北朝鮮と争うなでしこジャパン 中立国(第3か国)サウジアラビア・ジッダでの第1戦に強い気持ちで出発 もっとも遠く、もっとも厳しい条件で、もっともタフな「中立国」?での開催に・・・

20日=千葉県内 24日にパリオリンピックの出場権(アジア2枠、もう1枠はオーストラリアとウズベキスタンが対戦)をかけて北朝鮮と対戦する女子日本代表「なでしこジャパン」が、第1戦が行われるサウジアラビア・ジッダに向けて合宿を行っていた千葉県内から出発した。日本サッカー協会は19日にAFC(アジアサッカー連盟)から、アジア最終予選第1戦目がホーム&アウェーで予定された北朝鮮ではなく第三カ国となるサウジアラビアで実施されるとの連絡を受けて準備に入った。中東でも乗り換えが必要なジッダへの航空路も、2つのエアラインに分かれて予約せざるを得ない慌ただしさのなか、ホテルを出発する池田太監督は「むしろ楽しみ」と、想定されるなかでもっとも遠く、時差、天候などでももっとも厳しい条件で、もっとタフな戦いにも落ち着いた様子だった。
 
 五輪のアジア最終予選がホーム&アウェーで争われるのはそもそも異例で、昨年12月下旬に北朝鮮が第1戦を「平壌」と発表してから試合4日前まで開催地が決定しないという異常な事態に陥っていた。選手は20日の夜出発し、現地に到着するには乗り換えを経て21日の早朝か午前。23日は公式会見、練習といった行事が決まっているため、トレーニングができるのは21日、22日しかない。第3カ国での開催がようやく決まった、といっても想定された中でもっとも移動距離が長く、時差が生じ、気候や環境も大きく異なる中東へ「持って行かれた」格好だ。
 北朝鮮への入国には中国を経由する以外なく、その中国からも定期便がないためチャーター便が必要になる。北朝鮮側は受け入れる方針を示したとも言われるが、練習会場、宿泊、それらへの移動といった細かな運営上の確認が取れなかったために、AFC側が第3か国での開催を北朝鮮側に提案していた。
 ジッダに決定したプロセスや詳細は明らかにされていないが、なでしこにはヨーロッパでプレーする選手が多く、日本で合流した途端に再び欧州に「とんぼ返り」を強いられる。選手はベストを尽くす姿勢を貫き、どんな状況にも対応する。
 一方、北朝鮮との対戦が昨年10月に決定してから約3カ月間、JFAは一向に返事の来ない相手国や、状況をなかなか決着できないAFCとの間で「難交渉」に巻き込まれた。時間をできるだ引き延ばすなか、北朝鮮代表が欧州で合宿し時差や暑さに先に対応していたのではないか、といった情報もある。
 この日取材に対応した熊谷主将は「あってはならないことだと思う」と話した。来月行われる男子のW杯2次予選アウェーの北朝鮮戦でも、同じAFC、北朝鮮を相手にどう着地するかが問われるはずだ。
 チームには西シェフも帯同し短い時間であっても選手たちのモチベーションを食事であげる。
 すでにチーム関係者が現地入りしており、練習環境やホテルとの調整は行っているという。現時点でキックオフ時間も決まっておらず、「日が落ちてから、夕方くらいではないか」(佐々木委員長)と不確定要素は依然残っている。

[ 前のページ ] [ 次のページ ]

このページの先頭へ

スポーツを読み、語り、楽しむサイト THE STADIUM

増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

最新記事

カテゴリー

スペシャルインタビュー「ロンドンで咲く-なでしこたちの挑戦」