スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年2月28日 (水)

「どうしても決めたいな、と・・・でもヘッディングでのゴールは(キャリアで)初めてでした」決勝点を奪った20歳の藤野が試合後、笑顔で告白

 後半31分、ショートカウンターで始まった攻撃に「なでしこジャパン」の底力がぎゅっと詰め込まれた。北朝鮮が後半21分、ジッダの初戦で日本を苦しめたメンバーを一気に投入して攻勢をかけてくる時間帯、1点を守り切るにはセーフティとはいえない。追加点は欲しいがバランスも崩したくない。そんな時間帯、なでしこが磨き続けた連動性と池田監督が「我々のここぞ、の集中力は強み」と話してきた地力が発揮された。
 1戦目では力を出しきれずに試合後悔しさを見せた長野が、早いタッチからコントロールしたスルーパスを右サイドに展開。これに清水が駆け上がると、ファーストタッチでDFの股を素早く抜く高い技術を見せてクロスをあげる。この時ゴール前には、清家、藤野、さらに後方から長谷川も勢いを付けて駆け込んできた。
 清水が、「顔をあげたら、3人入ってきているのが見えたので、(クロスを)あげれば誰かが決めてくれる、と思って思い切りいった」と試合後振り返った通り正確なボールが試合を決定付けた。
 「普段は入っていなかったスペースだったけれど、どうしても決めたかったので」と、清家の前に飛び出した藤野がジャンピングヘッドでゴールを奪って2-0とした。試合後の取材ゾーンでは「本当は貴子さん(清水が清家を)を狙っていたと思いましたが、どうしても決めたかったんで。GKが(ポジションを)移動しているのも見えていた」と冷静な狙いを解説。そして、「チームを勝たせる仕事ができたのがとても嬉しい。でもヘッディングは(キャリアで)初めてでした」と茶目っ気たっぷりに笑った。

 2戦で合計180分、移動距離はジッダと日本の往復で約2万キロ、気温差25度の厳しい五輪最終予選は前半、高橋のゴールで大きく動いた。
 この日は3バックでスタート。3バックでスタートから入った試合は昨年のW杯で、その後の親善試合アルゼンチン戦(北九州)で熊谷を中盤に挙げてアンカーとする4-3-3に。アジアの2次予選、昨年2試合を行ったブラジル遠征、ジッダでの一戦と全て4-3-3を続けてきた。そうした中、池田監督は3バックで熊谷を最終ラインに戻し、チームに安定感と安心感をもたらした。熊谷にはプレッシャーもかかったはずだが、昨年のブラジル遠征、短い時間で移動をし2試合をこなした中で1試合目の問題を2試合目に修正して勝利した経験が存分に活かされた。

2大会連続での五輪出場も、メダル獲得にはまだまだ課題は多い。「パリでは金メダルを狙っていく。まずはメンバー入りを目指して全員が競ってチーム力を高めていきたい」と熊谷は主将として強いメッセージを発した。

過酷なスケジュールをこなしながら、なでしこは常に明るく前向きに、ジッダでもポジティブさを懸命に見せて振る舞った。試合後、選手たちが控えていた通路からお互いを称賛する大きな拍手と歓声、そして「本当に良かったぁー」と安堵の声がずっと響いていた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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