スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2024年2月29日 (木)

パリ五輪出場権を獲得したなでしこジャパン熊谷主将第1戦のジッダ開催について「2度とこういうことがあってはならないと伝える義務がある」とAFCなどに意見を伝える方針を示す

29日=羽田空港 28日北朝鮮とのアジア最終予選に2-1で勝利し、パリ五輪出場権を獲得したサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」で、欧州でプレーする選手たちが午前中に所属クラブへと戻るために帰国した。11年のドイツW杯優勝からチームに在籍、数々の経験を持つDF熊谷紗希キャプテン(33=ASローマ)が取材に応じ、北朝鮮戦との第1戦(日本のアウェー)が24日の試合4日前になって予定されていた北朝鮮の平壌から、とても中立地とは呼べないほど遠方のサウジアラビアのジッダに急きょ変更になった問題について、改めてAFC(アジアサッカー連盟)などに対して現場の声を上げていく考えを示した。
 AFCは、12月下旬にホームを平壌で開催すると発表した北朝鮮側に、定期便が飛んでいない点や平壌の寒さなどを考慮して中立地での開催を提案。しかし直前まで開催地が決まらず、熊谷をはじめ欧州でプレーする選手は、欧州から日本に到着した翌日に再度、カタールのドーハ経由のロングフライトでジッダまでアジア、中東を横断しなければならなかった。また、欧州の中継地から帰国せずに待機した選手もいる。

 熊谷は「選手が大きな移動を余儀なくされた。正直、あってはいけないことだと思っているし、今後のためにも、しっかりしたレギュレーションをつくるべきで2度とこういうことがあってはならないと伝える義務がある」と、キャリアゆえの責任をも示した。
 サッカー界には6万人超の選手が加入する国際プロサッカー選手会「FIFPRO」という組織があり、熊谷は選手評議会の委員にも選ばれている。選手の健康やハラスメントなどに選手が問題提起をする会合も設けられており、熊谷はこうした中から現場の声を発信していく強い気持ちで、今後、レター(文書)なのか、聞き取りで話す機会を設定していくのかを検討するという。

 選手も協会も「予選中はとにかく集中する」と批判も不満も公に口にはしなかったが、本来、五輪予選のような重要な大会には正式なレギュレーション(規則)があり、それによって運営されなくてはならない。しかし1週間を切っても開催地が決定しないなどあり得ない事態で、結果的には、アジアでもっとも遠く6時間の時差と天候の大きく異なる場所での開催となってしまった。AFCの判断でサウジアラビア協会はW杯招致を目指す点もあって、好意的に会場を提供、運営をしてくれたものの、本来、没収試合やペナルティの対象にもなる状況だった。
 「今は目の前のミッションに集中する」という、実に日本的な判断が果たして良かったのか。もしこれが男子のW杯予選だったらどうなったのか。五輪出場が叶ったからこそ、せめて経緯を明らかにする
説明は聞きたい。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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