スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2023年12月 3日 (日)

小野伸二現役最終戦で22分プレー 試合中に両チームの選手が一緒に花道を作って送る「(サッカーは)excellent!自分が自分らしくいられた」試合後の会見で

3日=札幌ドーム(観衆31143人) J1最終節が各地で行われ、テクニックと強い精神力で日本サッカーをけん引した札幌のMF・小野伸二(44)の現役最後となる試合が、プロとしてのキャリアをスタートさせた浦和と対戦した。小野は、清水に在籍した12年7月以来11シーズンぶりとなる先発で出場。Jリーグの出場も昨年5月の柏戦以来だったが、ラストマッチで多くのサポーターが限定のユニホームを着て見守るなかキャプテンマークを巻き、「ベルベッド」と呼ばれる小野らしい繊細なタッチのパスを見せて前半22分に交代。サポーターのスタンディングオベーションと、札幌、浦和の選手が作った花道を歩いてベンチへ戻った。
 後半立ち上がり、ペナルティエリア右で浦和の大久保智明がボールを受けて、札幌・宮澤裕樹を抜こうとした際、宮澤の腕にボールが当たりハンドと判定。オンフィル―ドレビューを行ったが判定はハンドもまま、宮澤にイエローが出され、これをAショルツが右足で決めて浦和が先制に成功した。
 浦和の守備にリズムを外されてしまう札幌はなかなかシュートまで持ち込めず、27分、FKを得た浦和にチャンスを作られてしまう。最後は中島翔哉にゴールを決められ0-2と試合を決定付ける追加点を許してしまった。4位の浦和は勝ち点を57とし、札幌は勝ち点40で最終戦を終了した。
 試合後にはドーム内で、引退発表以降、封印してきた記者会見が行われた。記者からの質問にも「この空間も楽しんでいる」と終始笑顔で対応。「正直、(この試合で)結果が出ないことに対して責任を感じているし勝てなかったのが残念です」と、選手としての厳しいコメントからスタート。そして「勝つためのプランがあったのに、20分ピッチに立たせてもらって感謝している。もう少しピッチに立っていたかった・・・」と札幌ドームを満員にしたファンにもっと楽しんもらいたかったようだ。
 記者から「サッカーはどんな存在だったか」と聞かれ、「excellent(エクセレント)!自分が自分らしくいられる時間だった。自分が人間として成長できた」と即答した。
 会見の最後に浦和でプロのキャリアをスタートさせてから札幌でも共に歴史を築いた河合竜二(コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン)からクラブを代表して花束をもらい、最後まで笑顔がたえないハッピーな会見となった。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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