「ガラスの靴を探しに行くシンデレラたち」サッカー女子W杯得点王の宮沢ひなたが移籍に渡欧 世界陸上やり投げ金メダルの北口と宮沢が見せてくれる現代のシンデレラ考
28日=羽田空港 サッカーのW杯オーストラリア・ニュージーランド大会で5得点をあげて得点王「ゴールデンブーツ」を獲得した宮沢ひなた(23=マイナビ仙台)が、海外移籍のために羽田から一先ずロンドンに向けて出発した。現地で、宮沢が契約する代理人と面談するなどして現在オファーが来ている欧州リーグのクラブに移籍する予定。W杯で結果が出る前から「このままじゃダメだと思っていた。海外に行くのが(キャリアの)第一歩」と、海外で揉まれる中での成長を望んで来た。持ち味のスピードを活かしゴールに向かっていくプレーを期待されたが、自然体でどこか控えめな性格もあったのか、これまでゴール量産ができなかった。しかしW杯という大舞台で、自分らしさを追求した時、ゴールが「付いて来た」と振り返る。
宮沢は「W杯での得点がベースだと思ってみられる。失敗したら、と思うこともあるが、自分らしく思い切ってプレーしたい。言葉の問題や試合に出られない時もあると分かっている。そこをどう乗り越えるかだと」と、海外移籍で起きる様々な困難も楽しみにしているようだった。
27日に閉幕したブタペスト世界陸上では、同大会においてマラソン以外では女子史上初めて、やり投げの北口榛花(25=JAL)が金メダルを獲得する快挙を果たした。しかも金メダルを決めたのは最後の6投目。最終投てきまで決してぶれない高度な技術、勝負強さ、たくましさは、それを求めて渡欧した宮澤の少し前を行く。混雑するロビーを一人歩宮沢の姿に、北口が単身でやり投げのためにチェコに留学した姿が重なった。
ジュニアを指導していたセケラクコーチと出会い、その指導を受けたい一心でメールをな何十通も書き続け、根負けしたコーチが「来てもいい」と言うと飛んで行った。コーチは「まさか本当にチェコまで来るとは思わなかった」と笑う。難しいチェコ語を習得しなければ競技会でもいいパフォーマンスはできない。世界陸上で金メダルを獲得した後、チェコ語でメディア取材を受ける姿が話題になった。
こうした活躍を「シンデレラ・ストーリー」と表現するが、現代のシンデレラである彼女たちは、自分の「忘れ物」の靴を王子様ではなく、自分に合うサイズを求めてどこまでも探しに行く。誰かを、何かを待たない。宮沢の挑戦はまだ始まったばかりだが、言葉も文化も違い、知り合いもいなかったチェコでやりの行方にかけた北口の心意気は金メダル以上に誰もの背中を押してくれたように思う。