「2023年は女子サッカーの番に」7月に女子W杯開催 なでしこジャパン前監督、高倉麻子氏は中国でチャレンジ
わずか1か月前は、中東の強い日差しのなか、カタールW杯でドーハの町のあちこちを走り回っていたのが信じられない。そして、帰国してわずか半月で新年を迎えてしまったのも信じられずに、23年はどんどん進んで行く。日本代表選手も、森保一監督も、こんな不思議な時間空にいるんじゃないかと想像する。
いつも以上にドタバタした年末年始、高倉麻子前・なでしこジャパン監督(54)と久しぶりに会えた。このほど中国女子スーパーリーグに参加する「上海盛麗足球倶楽部」(上海RCBW)の監督に就任し、その報告をしてくれた。中国は、昨年のアジアカップで日本と韓国を破って優勝しただけに、女子サッカーへの関心や人気も一気に高まっているだろう。
高倉監督は東京オリンピックの後、任期満了で退任し、その後は「東北、岩手になでしこリーグを」と大きな夢を掲げた「いわてスポーツプロジェクト」のアドバイザーに就任。各地を回って、まだ環境が整っていない中でも未来のなでしこを夢見る選手や関係者の背中を押してきた。1991年、女子「初の」W杯(当時の名称は世界選手権)に出場し、国内で始まった「なでしこリーグ」では史上「初得点」を挙げ、東京五輪ではA代表「初の」女子監督を務め、常に先頭を走ってきた彼女が、今度もまた日本の女性監督で「初めて」中国女子スーパーリーグで指揮を執る。
日本の女子サッカーの歴史において、いつでも「初」の栄誉と、重い責任を負ってきた監督の新たなキャリアに敬意を払うしかない。1月中旬には、男子のコーチ3人と上海入りするそうだ。「何が起きるか全く想像もつかない未知の世界ですが、そういえば、昔からいつでも、``初、、の看板が背中に・・・、今回もまずチャレンジしてみようと思います」軽やかにそう笑う。同じ68年生まれ、仲の良い同級生でもある森保一監督にも報告し「ポイチにも凄く励まされた」と嬉しそうに言った。
今年は女子W杯が7月、ニュージーランドとオーストラリアの共催で行われ、女子サッカーの隆盛を示すように、出場国は24から男子大会と同じ32カ国に拡大された。アジアからも開催国オーストラリア、日本、中国、韓国、フィリピン、ベトナムのほか、今後プレーオフの結果次第で、日本から派遣された岡本三代監督率いるタイ、台湾にもチャンスがある。
欧州では昨年、バルセロナFCの女子がチャンピオンズリーグで、カンプノウに9万人を超える観客を集め、女子の欧州選手権(ユーロ)では聖地ウェンブリ―スタジアムでのイングランド対ドイツの決勝に、男女通じて最多となる8万7192人が詰めかけるなど、過去にはなかった注目の中でW杯を取りに来るだろう。最多4回優勝の米国も含め、優勝好捕は絞れないレベルとなった。
「なでしこジャパン」は2月に米国遠征を行い、米国、ブラジル、カナダと日本よりもランキング上位の国と対戦、本番へのテストとなる。男子より先にW杯優勝を果たして「新しい景色」を見た女子が、優勝後、年々他国の強化策に抜かれて苦戦している。しかし、日本代表が示した様々な可能性を、今度は女子が示す番だ。11年のドイツ大会の際も、優勝候補になど一度もあがっていなかったのだから。