スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2022年12月 6日 (火)

日本代表 8強の壁、4度目の挑戦も突破できず後半追いつかれ延長、PK戦で敗退も数々の「新しい景色」を示す

 FIFAランキング24位の日本代表は、同じ12位のクロアチアに対し3-4-3と試合開始から3バックで入る。今大会では初の先発となる冨安健洋を入れ、遠藤、堂安が先発に。スペイン戦から先発を3人交代し、3-4-2-1の布陣で入った。ノックアウトステージに入り、ともに延長(この場合は交代を1人加えて6人になる)、PKの可能性があるなか、フィジカルでの消耗など、慎重で緊張感が漂う立ち上がりに。前回ロシア大会準優勝のクロアチアは、ロシア大会でも3試合連続延長戦で決勝へ勝ち上がった粘りが信条。似たカラーの日本にとってドイツ、スペインに続き難敵となった。
 8分、右に入った冨安がボール処理をぺリシッチが奪い、ドリブルでエリア内へ切れ込む。右足でシュートを打たれる最初のピンチを権田が落ち着いてセーブし立ち上がりの失点を免れた。クロアチアはモドリッチを中心とする中盤が、ポジションを流動的に動き、またパスも日本の守備陣を見て、ロングパスとショートパスを出すなど日本は戸惑いながら、遠藤、守田が粘り強くセカンドボールを拾いチャンスを伺う。43分、右CKを獲得。キッカーの堂安はショートコーナーから、鎌田、伊東、再び堂安と受けると、右サイドから左足で深いクロスを入れる。これを、ファーサイドに走り込んだ吉田の折り返しから前田が左足で流して先制。VARチェックを待ったが、ゴールと判定され、今大会4試合目で初めて先制点を奪って前半を折り返した。
 後半、両チームとも交代なしでスタート。クロアチアはユラノビッチが右サイドでボールを止め、ロブレンへ。右足からのクロスにぺリシッチが頭で合わせてこれがゴール右隅へ。早くも同点となった。森保監督は早くもカードを切って長友と三笘薫を交代。同時に前田と浅野拓磨を交代して、試合を動かす。またドイツ戦で負傷し、状態が心配された酒井宏樹と鎌田を交代する。しかしクロアチアのゴールをなかなかこじあけられず、42分には堂安を南野拓実に代え4人目の交代を選択した。4年前、ロシア大会の同じラウンドでベルギーに超高速カウンターで敗れた試合を乗り越えて8強を目指す日本代表にとって、厳しい4分間のアディショナルタイムを収めて試合は延長戦へ突入した。日本がW杯で延長戦を戦うのは、2010年南ア大会で8をかけてパラグアイと対戦(PK戦で敗れる)して以来となった。

 延長前半、最初に奪ったCKを伊東がショートコーナーとしたがチャンスを作れなかった。クロアチアは延長前半9分疲労が見えだしたモドリッチ、コバチッチを下げてマイエル、ブラシッチを投入した。延長前半終了間際、日本は左サイドを三笘が突破し、そのまま持ち込んで右足でシュート。強烈な枠内へのシュートだったがGKに阻まれて前半を終えた。延長後半に入る際に、田中碧が守田と変わった。しかし後半も両チームとも得点にはならず、PK戦へと入った。日本はコイントスで吉田が日本サポーター側を選択。いい波乗りたいところだったが、最初のキッカーを志願した南野が外し、2番手の三苫も止められた。3番手の浅野が決めたが、4番手の吉田も外し、日本のW杯で3度目の対戦となったクロアチアに敗れ(1分2敗)、W杯4度目の挑戦だったベスト8の壁にはまたも跳ね返された。
 結果は過去3度のW杯と同じだが、今大会は19選手が海外クラブに所属し4年前の悔しさを晴らすために努力した。ドイツとスペインという優勝経験国を、1998年の初出場以来24年で初めて、一度もできなかった逆転の展開で倒した。初めて2大会連続でグループリーグを突破し、ベスト8の前に見なければならない「新しい景色」は次々と示した。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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