「東京五輪代表10人+3人のタフな経験が今、生きる」W杯の経験がないのではなく、東京五輪を経験した若手の存在感
カタールW杯代表には東京五輪代表が10人選ばれ、オーバーエージの吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航を加えると13人が東京五輪代表を経験している。これだけ多数が五輪からW杯代表まで「昇格」し、この中にはW杯経験者はいない。こうしたバランスについて、11月1日の会見で質問を受けた森保一監督は「もちろんその話(攻撃陣に東京五輪組が名を連ね、W杯の経験値が少ないのでは?)は代表を決めるスタッフの間でも出ました。ただ、彼らの野心と、伸びて来ている勢いに賭けたい、と最終的に判断しました」と答えた。監督が選考の際に期待した野心や勢いとは、W杯の経験と同じ意味と重みを持った「東京五輪の経験」にあったということが、W杯の連戦でよく分かった。
昨年の五輪代表は
7月22日 東京スタジアムで南ア(1-0)
25日 埼玉スタジアムでメキシコ(2-1)
28日 横浜スタジアムでフランス(4―0)
31日 トーナメント1回戦準々決勝 鹿島スタジアムでニュージーランド (0-0でPK勝利)
8月3日 トーナメント2回戦準決勝 埼玉スタジアムでスペイン(0-1)
8月6日 埼玉スタジアムでメキシコと3位決定戦(1-3)
酷暑のなかこれだけ過酷な中2日の日程をやり遂げている。オーバーエージを除く五輪組ではただ1人のディフェンダー、板倉滉が「(W杯の中3日は)東京五輪に比べればずっといい。中3日あれば1日リカバリーに使える」と、コスタリカ戦に向けた練習が始まったこの日、笑顔で答えた。酷暑と、厳しいコロナウイルス感染症対策を強いられる状況で、中2日で五輪を戦った経験値は、フィジカル、メンタルでもどれほど貴重なものだったか。五輪を経験した選手たちが、中3日の厳しいW杯をものともしないタフさをすでに持っており、そしてその経験値がW杯中3日の連戦の際に、必ず大きな効果と自信と余裕をチームにもたらすと綿密な計算を踏んだからだろう。
森保監督はドイツ戦の勝ち点3を「安全な勝ち点ではない」と分析する。コスタリカ戦の勝利こそ「安全な勝ち点3」になるとすれば、先発と交代選手5人のバランス、バリエーションで、一気に勝ち点3を奪いに行くはずだ。疲れ知らずの、オリンピックのジョーカー(切り札)たちが前線に揃った。攻撃陣にW杯の経験がない、のではなく、攻撃陣には東京五輪の経験がある。