スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2022年11月24日 (木)

日本サッカーの歴史を変えた決勝ゴールを生んだ 板倉―浅野の「内側(ないそく)仲間」の黄金ライン

 後半38分、日本は自陣でのリスタートから板倉が前線へロングパスを送った。右の後方からの素早いリスタートに、同点にされたうえに、スピードで振り回されてうんざりしたのか、日本のマークをしていなかった。こんな気の緩みを板倉は見逃さなかった。裏へ素早く動き出した浅野が、後方から来る難しいボールを、右足で正確なトラップ。シュロッターベックと競りながらPA内右に持ち運ぶと、角度のない位置から右足でシュートを放つ。名手GKノイアーと1対1になったらどうするか、と、練習で聞かれ「思い切り(シュートを)振り抜くだけです」と話していた通りのプレーを貫いた。
 試合後、日本サッカーの歴史を変えるゴールを生んだ2人がユーモラスなエピソードを明かした。2人は代表の招集以来、同じひざの内側じん帯を痛めていたためずっとリハビリを共にしてきた。同じタイミングで復帰を果たし、これまでとは違った特別なラインが誕生したようだ。
 「(板倉がボールを持った時)正直来るな、と思った。ずっと内側=ないそく(じん帯を痛めた)仲間として一緒に過ごして来たので、ホットラインができていました」と、浅野がユーモアたっぷりに言うと、板倉も「リハビリをずっと一緒にやってきたんで」と、じん帯がつないだ強固なラインが意思疎通も見事にはかったと笑った。そして「でもあれは本当に凄く難しいボール。本当に凄いゴール」と、角度のないところまで競り合って決めたゴールを称賛した。CK、FKといったセットプレーに関してはチームとして決まらなかったが、「内側仲間」アイディアと機転が歴史的ゴールを導いた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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