スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2022年10月16日 (日)

初の東京レガシーハーフマラソン開催 男子は1~8位をケニア勢が独占、日本人トップは村山の9位 パラリンピックマラソン金メダリストの道下は幻の世界新

16日=東京・国立競技場発着21・0975㌔ 昨年行われた東京オリンピック1年を記念して新設された「東京レガシーハーフマラソン」が行われ、エリートランナー、一般ランナー、車いすレース、視覚障がい者や五輪では実施がなかった知的障がい者まで幅広く、参加者が多様性を掲げる「ミックスレース」に参加した。
 エリート女子では、山口遥(AC・KITA)が1時間10分35秒の3位で日本勢トップと粘った。優勝は、キャロライン・ニャガ(ケニア)が1時間8分23秒だった。

 エリート男子は、V・キプケモイ(ケニア)が1時間0分10秒(速報)で優勝し、1位から8位をケニア勢が独占するレースで、ハーフ57分台のベストを持つムティソを引き離しただけに「いい準備をした結果。とてもいいレースができた」と、後半の上り坂でライバルたちを引き離した勝負に自信をのぞかせた。
 日本勢は、当初出場を予定していた五輪のマラソン代表の中村匠吾(富士通)と服部勇馬(トヨタ自動車)がケガで欠場したほか、マラソン元日本記録保持者の設楽悠太(Honda)、吉田祐也(GMOインターネットグループ)、神野大地(セルソース)、女子でも2015年北京世界選手権代表の前田彩里(ダイハツ)もケガで、有力と思われた選手の多くが欠場する寂しい初開催となった。男子では日本人トップが9位の村山謙太(旭化成)で、1時間2分14秒。村山は「力不足で後半付いていけなかった。日本人トップという最低限でまとめる走りしかできず悔しい」とレース後話した。

 車いすの部は、男子は鈴木朋樹(トヨタ自動車)が42分19秒、女子は土田和歌子(ウィルレイズ)が50分1秒で制した。しかし、東京パラリンピック金メダリストの視覚障がいT12(弱視のカテゴリー)の道下美里(三井住友海上)は、世界新を大幅に更新する好記録をマークしたが、一般ランナーと一緒のゴールが大混雑するなか、伴走者が先にゴールしたとして(伴走者は先導してはいけないという)規定に従い失格。1時間23分34秒が幻の世界新となる残念な結果となった。ミックスレースの場合、男女エリート、車いす、視覚障がい者らのゴール地点での整備が重要。道下は「こういうこともあります」と誰も攻めなかったが、主催する東京マラソン財団は「まだ、(伴走者が先にゴールし失格になった)詳細が分かっていない。原因を解明してきちんとお答えしたい」としている。
 「レガシー」と銘打った今大会は、19年11月、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長が酷暑を理由に五輪のマラソンと競歩の会場を突如、東京から札幌に移し、今度は別の時期に「東京を走れなかったランナーにマラソン大会を開催してはどうか」と小池百合子都知事に提案し創設された。

[ 前のページ ] [ 次のページ ]

このページの先頭へ

スポーツを読み、語り、楽しむサイト THE STADIUM

増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

最新記事

スペシャルインタビュー「ロンドンで咲く-なでしこたちの挑戦」