札幌五輪招致に危機感 JOC山下会長と秋元市長が透明性、公平性を共同宣言するも見えない具体策
8日=札幌市(JOC資料発表) JOCの山下泰裕会長(65)は札幌市で行われた「北海道・札幌2030プロモーション委員会」の第4回会合に出席し、札幌市の秋元克広市長と、JOC(日本オリンピック委員会)と、2030年の招致を目指す札幌五輪・パラリンピック開催が決まった際の、組織委員会や大会運営の透明性と公正性と宣誓する共同宣言を発表、双方で署名した。
山下会長は「招致活動を継続するからには、この機会に透明性、公正性の確保の姿勢をしっかり示していくことが必要」と話し、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件を踏まえ、市民やファンの五輪への疑念、嫌悪感まで広がる現在の状況に、スポーツ、オリンピックの立場から再発防止策の論点を文書で公表した。年内にも内定する予定で進行していた招致関係者の危機感が、露わになった格好だ。
2人は、9月中旬にスイスに本部を構えるIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長を訪問し、面談する予定だったが、一連の汚職事件で逮捕者が出るなか、「日程調整が困難だ」と、キャンセルになった。今回の共同での「クリーン宣言」は、IOCと再度面談日程を調整するうえでも、「手ぶらではいけない」といった重要な側面を持つ。
宣言の概要は、①組織委員会(決定機関は理事会)については、役員選考、理事会の役割の明確化、適正な規模をあげ、今回、高橋治之理事らの逮捕で重大な論点となっている②利益相反、③マーケティング事業の3点をあげたものの、具体性はなく、ただ問題点を指摘しただけにもみえる。
今回、「みなし公務員」として業務上の違反規定を負ったはずの高橋理事とAOKI、KADOKAWA 元電通社員の贈収賄は「透明性」と「公正性」の確保といった理想論とは別の次元にある。
山下会長は8月30日に、JOC定例の記者会見で、高橋氏について初めて発言し、「今回の問題はスポーツ界のものではなく、私たちができることにも限界がある。ただ、同じ問題を繰り返さないようにすべき」と強調したが、その際も再発防止に向けた具体策はあげなかった。「スポーツ界」の積極的な発言や、行動が見えず、重要な決定にリーダーとして関わってこなかった、その存在感の希薄さも、今回の事件の背景にある構造的欠陥ではないか。