スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2022年6月15日 (水)

吉田がPKを与えた瞬間、チームを映した光景 

 森保監督が指揮を執ってほぼ4年で50試合以上を積み重ね、W杯の日程と同じく、12日間で中3日、4試合組んだラストゲームは優勝で終えなくてはならない試合だった。国内での代表戦は、東アジア選手権E1があるものの、国内組だけで戦う予定で、欧州組が揃って試合を組めるのは9月になる。11月開催のW杯では国で通常の壮行会がないため、代表が揃ってサポーターの前で試合をできるのはこの日はいわば「壮行試合」でもあった。10日のガーナ戦(4-1)からスタメン9人を入れ替えたが、後半10分にPKで先制点を奪われ、その後、三笘薫(サンジロワーズ)、古橋亨梧(セルティック)を入れたが流れを変えられずに完封されてしまった。森保監督指揮下で3失点以上を喫したのは、19年のアジア杯(カタール1-3)、19年6月の南米選手権のチリ戦(0-4)、同11月のベネゼエラ戦(1-4)以来2年半ぶり。「いい守備からいい攻撃」と常に目指すサッカーを表現する代表にとって、PKを与えたシーンも、同31分、終了間際ともに守りが崩れた結果で、いい守備どころの話ではないだろう。
 チュニジアのカドリ監督は「この試合は大変、忍耐を要するものだった。勝つことができて良かった」と振り返り、「日本はプレーが速くて、戦略的。しかし、時間が過ぎるとスペースができる。そこを突くことを心掛けていた。もし弱点があるとすれば守備で、DFラインは難しい状況に置かれるとミスをする。DFラインの裏につけることを意識した」と、日本のウィークポイントを研究し実戦した手応えを試合後明かした。吉田はターゲットとされていたようだ。
 3失点全てに絡んだ吉田は「前半はすごくお互いに良い試合が出来た。向こうも強度が高くて、守備もかたかった。僕らもチャンスを決めきれず、後半自分たちのミスから崩れてしまった」と、前半の決定機を決めきれなかったと振り返り、「最後、不甲斐ない形で終わってしまって。W杯の前のホームで、サポーターの皆さんの前で全くいいプレーを出せなかったのは悔しい」と話した。
 また、警告をもらいDFのリズムを崩したDF長友も「ちょっとしたミスがやっぱり失点につながってしまう。そのミスを自分もチームもカバーできなかった。そこは反省したい」と話した。
 気になるのは、吉田がPKを与えてしまったシーンだった。2,3点目も連携ミスが起きた場面、吉田に対して若手の何人かが、「どうしてそんなイージーミスを!」とばかりに両手を広げて呆れたり、右手で空を切るポーズを見せていた。吉田に声をかけに行ったの同じベテラン・長友だけで、先制点1点を奪われ肩を落とし、落胆するチームを鼓舞する選手もいない。
 W杯ベスト8は、そんなに楽な試合で果たせる目標ではないはずだ。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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