スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2022年6月 7日 (火)

サッカー日本代表の「W杯ベスト8スイッチ」オン 「選手たちの自信を感じた」森保監督

 日本代表にとっては、18年W杯のベルギー戦以来となる世界トップファイブとの対戦(19年南米選手権では当時ランキング7位のウルグアイと対戦)となった。コロナ禍もあり、海外遠征、招待試合が組めなくなって2年が経過。アジア最終予選を突破したが、カタールに向かって組まれた世界NO1、W杯優勝を狙う国との一戦は、「W杯ベスト8のスイッチ」を入れる意味もあった。スイッチがぎくしゃくし入らないケースもあるし、入れても作動するのかしないのか、それは、本当に世界トップのチームと対峙しなければ未知数の点検だ。森保監督は「メンタル的には全く負けていない。選手の頼もしさ、自信を感じた」と、選手が引かずにプレーした成果に会見で胸を張った。
 開始2分、ブラジルの立ち上がりいきなりのシュートにはヒヤリとさせられたが、DFラインと遠藤、さらに右サイドの長友の起用が的中し、ブラジルの左サイドを攻めるキーマン、RマドリーのFW・ビニシウスを相手に全く譲らず、対人の強さ、それは精神面でも日本のシンボルとしての存在感を改めて示した。試合後も「相手が強くなればなるほど自分の実力を発揮できると(試合前に)言ってきましたが、モチベーション高く、絶対に仕事をさせないという強い気持ちで試合に入りました」と、3度ブラジルと対戦した中で、チームとしても個人としてももっとも強い手応えを得たと笑顔を見せた。森保監督も「新しい選択肢になった」とベテランのコンバート成功を喜び、同時に、センターバックで再三対人の強さを発揮した板倉の冷静さも称えた。

 チッチ監督は試合後の会見で「W杯レベルの戦いだった。それは両チームとも精神面でよく表れていた」と日本を評価。「私たちのほうが執拗に得点を追いかけた」と、エース・ネイマールの日本戦5試合連続9得点目を喜んだ。執拗に得点を追いかけて動いたブラジルに対して、日本はゴール前でブロックを作り、連動しながら、「辛抱し、我慢し、粘り強く」試合を進めた。激しい雨の中だったが、スリップやボールコントロールに対しても慎重に対応。不用意なミスがなかった。
 監督は「きょうは1試合だが、もしこれがリーグ戦なら、強豪相手に戦い方次第で勝ち点を取るところまではできたかもしれない」と話した。これがもしW杯初戦のドイツ戦なら、と想定しての手応えかもしれない。
 4年前のロシアW杯で、日本がもっともベスト8に近づいた「ロストフの悲劇」「ロストフの14秒」から4年が経ち、ベスト8を目標にする国として、世界NO1を相手にし、少なくとも「リスペクトし過ぎることなく」アグレッシブに、久々に「世界モード」へ切り替えたスイッチは、さび付くことなくきちんと機能し始めたようだ。
 「聖地」国立競技場での日本代表戦は2014年3月以来で、この晩は、ほぼ満員となる6万3638人が詰めかけた。4カ国がトーナメント形式で争うキリンカップに臨み、10日にノエビアスタジアム神戸でガーナと対戦する。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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